第25話 開始
武士琉と蘭丸は温泉から上がり、部屋に戻って眠ろうと布団に入った。
すると、外が騒がしいことに気づいた。武士琉は部屋の襖窓を開けて外を見ると、
「信長様? って信長様!?」
窓から見えたのは、信長が森の中、ひそひそとこの城の近辺をうろついている姿であった。信長だけじゃなく、明智光秀や秀吉、他にも多くの武士がそこにはいた。
それを見た武士琉は、急いで浅井長政のもとに向かった。
「長政さん。信長が……この城の近辺に来ているようです」
武士琉はあわてふためいた声でそう言うと、長政は待っていましたと言わんばかりも風貌を浮かべ、静かにため息をついた。
浅井長政は決意していたようだった。
「始まったか。もう戦いをしなければならないのか?」
「……はい」
武士琉は悲しげにそう言った。
それを背に、長政は城にいる全兵士を集め、信長との抗争を覚悟した。
「皆の衆。この城に信長が来るぞ。今こそ信長を向かい討て」
ーーをおおおおおおおお
なぜか皆やる気だ。何でこんなにやる気なんだ?
まさか……まだ信長の恐ろしさは伝わってないのか?確かにまだ信長は活躍していない。だったら信長を雑魚だと思うのは必然なのか?
武士琉は状況に困惑する。
「駄目だ。浅井様。信長は強い」
「それでもな、私は行かねばならぬのだよ。たとえそれが最良の選択じゃないと解っていても、いつか戦わなければならなかったのだ。だから私は負けに行こう。それが、私の選んだ道なのだから?」
武士琉は顔をうつ向かせる。
「武士琉。前を見ろ。お前ならきっと、この世界を変えられるのだから。この世界を変えられるのは、お前だけだよ。だからあとは、お前に任せた」
このとき俺は思った。
浅井長政は信長に負ける。
その時、浅井の部下が長政たちのいるこの部屋に急いで入ってくる。
「浅井様。火攻めです……火攻め……ぶはっ!」
その部下は、背後にいた男に殺された。この男に、
「我が名は、信長。織田信長。天下をとる者だ!」
漆黒の殺意を纏い、黒刃の刀を持って長政へと向けた。
「おや。そこにおるのは武士琉か?」
信長は武士琉がいることに気づいた。
「お前もさらわれたのじゃな。今助けるぞ」
信長は刀の刃こぼれがないかを確認し、刃こぼれのしていない刀を浅井長政に向ける。
「おいおい。そこの武士琉とやらを易々と奪わせるか」
「浅井様……」
浅井長政はかばってくれている。本当のことを言えば、長政は武士琉など誘拐していないというのに。
「逃げろ」
浅井はそう耳元で呟いた。
武士琉は精一杯走った。もうそうするしかなかった。武士琉は蘭丸を見つけると、腕を引っ張り、無理やり走らせた。
「武士琉殿……。浅井殿は?」
「……死んだよ」




