第24話 火攻め
武士琉は浅井長政に警告をする。
「いずれこの城が織田信長に攻められる」と。
浅井長政は少し悲しげな表情をし、何かを決めたような表情になる。
「私はこの城で死のうと覚悟は出来ている。たとえ信長がここを攻めてこようとも、死ぬときはここで死にたい」
「はあ、そうですか」
武士琉は長政が死ぬ気だと解り、悲しさを隠しきれない。
「武士琉。この城には温泉がある。休息代わりに入っていくと良いよ。少しは体を休めなければ、やっていけないだろ」
「では、休息をいただきますね」
そう言って武士琉は温泉へと向かった。
脱衣所で服を脱ぎ、武士琉は温泉へと入った。だが、温泉には既に誰かいるようだ。
「誰だ?」
俺はその人物を覗き込む。覗かれた方は驚いていた。
「ぶ……武士琉殿!?」
「殿? って欄丸!?」
武士琉の目の前には、裸一貫の蘭丸がいた。
武士琉は目を逸らし、なるべく視線を向けないようにする。それでも成長している部分はちょいちょい視界には入るが……。
「武士琉殿。せっかく温泉に来たのですし、入ってください。それに、温泉で話すって言うのも楽しいじゃありませんか」
武士琉と蘭丸は背中合わせに温泉に浸かる。
互いの背中の温もりを感じつつ、武士琉は温泉で疲れをとる。
「なあ欄丸」
「何ですか? 武士琉殿」
「俺はお前に言いたいことがあるんだ」
「な……何ですか。改まって」
欄丸は少し髪を整え、顔を赤くする。
「実はな、俺の妹は昔死んじまったんだ。妹は俺の言うことなんかろくに聞きもしないで、暴れまわる。本当に困った奴だった」
「それは大変ですね」
「そんな妹は海に行きたがってたけど、うちは貧乏で金が無かった。俺がいた場所では、海に行くには一人結構な金額を払わされたから。だから必死にお金を集めて妹だけでも海に行かせたんだ」
「妹さん。嬉しかっただろうな」
蘭丸は楽しそうにそう言った。
「でもな……妹は溺れて死んじゃったよ」
「えっ!」
「楽しんできてもらうつもりが……ただ死んでしまったんだ。なんて悲しい話だろうか。それ以来海が怖いんだ。それ以来誰かを失うのが怖いんだ……」
武士琉は夜空を見上げ、静かに涙を流した。
「ねえ武士琉殿。私は死にませんよ。私は常にあなたといたいからです。だからあなたを幸せにするまで死にません。だから、死ぬ時は一緒ですよ」
欄丸は温かかった。温泉だからかな。でもこの温かさは欄丸の胸の中から来ているようだった。
「これが……温もりか」
俺は欄丸の胸で泣いていた。声を出して、大声で。




