第23話 浅井の城
武士琉は浅井長政との話を終え、蘭丸と御経がいるであろう部屋に戻っていた。
襖を開けて部屋へ入ると、蘭丸が心配しながら武士琉へと近寄る。
「武士琉殿。何を話されていたのですか?」
「たわいもない話だよ。……それより蘭丸、その服、何だ?」
蘭丸はなぜだか解らないが、お姫様が着るような美しく上品な和の着物を着ていた。先ほどまで着ていた甲冑は部屋の隅に置かれており、蘭丸は慣れないその服に戸惑っていた。
武士琉は蘭丸の美しいたたずまいに、目を奪われる。
「似合ってるぞ」
「あ、ありがとうございます……」
蘭丸頬を赤らめつつ、照れながら言った。
蘭丸は嬉しさで口角を上げ、微笑んだ。
「かわいい」
武士琉はつい、心の声が出てしまった。
その言葉を聞いていたのか、
「もう何ですかー」
蘭丸は照れつつも武士琉を優しい目でにらむ。だがそれが逆効果となり、武士琉は蘭丸の可愛さに心を踊らせる。
だめだ。めっちゃかわいい。
「あれ、御経は?」
「御経殿でしたら、少し風に当たりたいと申しておりましたので、護衛とともに庭を散歩されるそうですよ」
つまりは、今は蘭丸と武士琉の二人きりということだ。
どうしよう。蘭丸と二人きりはさすがに緊張してしまう。
だが武士琉は勇気を出し、蘭丸の隣に座る。
「武士琉殿。本当にあなたのおかげで我々は助けられました。あなたには感謝してもしきれません」
「いやいや。蘭丸が応援してくれたから俺は戦えたんだよ」
「武士琉殿。本当にありがとうございます」
蘭丸に礼を言われ、武士琉は少し嬉しくなった。
自分がやってきたことにも、意味があったのだと、武士琉は心の底から思い始めていた。
「蘭丸。俺はいつか魔王を倒すよ。そしたらさ……俺と……」
「あれ。蘭丸ちゃんじゃん」
武士琉の言葉を遮り、蘭丸にそう話しかけてきたのはお市という女性であった。お市は信長の娘であり、お市も父である信長を愛している。
「それよりなぜここに?」
「鷲津砦にいた時、浅井殿が近くをうろちょろしてるのが見えたんです。それで話しかけてみたら、」
ーー君かわいいね。今から私のもとに来るがいい。
「私はそのまま連れていかれました」
災難だったな、というような表情で武士琉と蘭丸はお市を見ている。
だがしかし、蘭丸は最悪の事態を脳裏の想定してしまっていた。
「武士琉殿。これはあくまで推測に過ぎないのですが、もしかしたらですが、信長様がここを攻めてくる可能性が大いにあり得ます……」
「ど、どうしてだ?」
「お市殿は信長様の娘なのですよ。大事な娘を誘拐されたとあらば、戦が起きるのは必然です」
そういうものなのか、と武士琉は納得する。
蘭丸はお市に目を向け、不安げな目で問う。
「信長様にはこのことは知られていませんよね?」
「いえ。浅井殿が近くに来たことはみんな知ってます」
お市は即答した。
その瞬間、その場にいた誰もが思った。
絶対ここは潰される……。




