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すれちがい戦争~魔王と大名の乱~  作者: 総督琉
鷲津砦夜襲
17/76

第16話 武士琉の子

 ーー1560年6月13日。1時00分。

 鷲津砦にて


 今の俺じゃデュラハンには勝てない。

 どうすれば、この子を生かしてこの場所から逃げることができる?


 武士琉は必死に頭を働かせるも、その答えは到底思い付くはずもない。

 頑丈すぎる体を持つデュラハン。そんな彼に、しかも魔王が認めた七名の魔族。そのデュラハンには、勝てることなど、そう簡単な話ではなかった。


「だい……じょうぶ。私は……もういい。私は……死にたい。だから……逃げて」


 武士琉の腕に抱えられた少女は、武士琉の服の袖を掴みながらそう言っている。

 魔王の子は自分の命を懸けて、武士琉()を助けようとしてる。

 本当に優しい子だな。だから……


「なあ少女よ。お前に名を与える。お前の新しい名だ。だから……だから少しは生きたいと思え」

「で……でも」

「安心しろ。死ぬときは一緒だ」

「そんなの……」


 武士琉を心配する少女へ、武士琉は優しく言った。


「お前の名は御経(おきょう)。名前に意味はない。でも……お前を見たらスッと思い浮かんだ」


 魔王の子は目を赤くし、涙をこらえている。


「御経。お前はこれから……魔王の子じゃなく…………俺の子として生きろ」


 武士琉は少女の頭をなで、涙を堪えている御経へと優しい温もりを与えた。


「終わったか?」

「うるさいな。デュラハン」


 「駄目。戦えば、殺される」

 御経は武士琉に抱きつく。


「やめて。もう……いいから。だから……私がやる」

「御経?」


 御経の目は白色(はくしょく)に染まっていた。

 彼女から放たれる純白のオーラは、魔族のものではない。もっと神聖なる何かのものであった。


「ルーズ、どうした。お前は失敗作なんだ。お前に力など備わってない。わかったらとっとと降参しろ」


 御経は武士琉の腕から降り、ゆっくりとデュラハンへと歩む。


「御経。何をするんだ?」

「私は御経。武士琉の子。だから私は武士琉のように強い。武士琉のように諦めない。でなきゃ武士琉の子じゃない」


 武士琉は御経をただ静かに見つめている。

 御経の自信に満ちた目を見ていると、武士琉は過去の自分を思い出す。だから……託したくなったのだろう。


「いけー。御経」


 御経は天へと両手を仰ぎ、呪文のようなものを唱え始める。


「蒼白なる怒りの(いかずち)よ。蓮獄なる魂の炎よ。我が力の全てを懸けて、我らが敵を打ち砕け。『怒雷魂炎(ザ・ソウル)』」


 雷と炎が少女の両手から放たれ、棒立ちのデュラハンを襲う。周囲へ扇動と戦慄が駆け、白煙が鼻をすするような刺激を放っている。濃い煙が辺りを埋めつくし、焦げた匂いが鼻を刺激する。


「デュラハンは?」

「やりましたよ、武士琉。私は……やりました」


 御経は倒れる。

 俺はすぐに駆け寄り、御経を抱く。


「武士琉……」


 今にも死にそうな声を出し、御経は武士琉を見上げる。そんな御経へ、武士琉は優しく言葉をかけた。


「さすがは、我が娘だ」

「でしょ、武士琉」


 御経は笑った。

 武士琉は御経を抱きしめ、彼女の強さを痛感した。


「帰るぞ。御経」


 ーー1560年6月13日。1時10分。

 デュラハン 対 武士琉&御経


 勝者 武士琉&御経

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