第14話 謎の少女
ーー1560年6月13日。0時40分。
鷲津砦三階にて
武士琉は逃げる。敵に背を向け、恥など捨てて。
その背中を、不思議なものを見るようにデュラハンは片手に抱えている顔で見つめている。
「あいつ、あれでも武士なのか?」
そこへ、デュラハンに伝令を伝えに来た一体のスケルトンが言葉を発する。
「デュラハン様。一階にも侵入者が」
「何!?」
デュラハンは焦る。
こんな失態が魔王様に知られたらという恐怖が、デュラハンの心を埋め尽くす。
「お前ら。今すぐ奴らを捕えろ」
「了解です」
武士琉は既に四階に上がっていた。
彼は恐れてなどいなかった。いや、恐れてはいる。だが仲間のためなら命を張れる。
なんと誇らしい武士なのだろう。
四階をくまなく探したが、特に子供たちは見当たらない。
武士琉は汗を垂れ流しながら走り、五階に駆け上がる。
コツンコツンと足音がなる度、武士琉は辺りを見渡す。
敵に見つかったら。罠があったら。
そんなことを恐れながら前に一歩一歩進む。
ようやくたどり着いた武士琉は、五階をくまなく調べる。が、
「誰もいない」
最後の部屋。
そこは石畳の扉で塞がれているはずだが、どういうわけか、赤い謎の神秘的な石で覆われていた。
「ここは……?」
いないことを願う。
戸惑いつつも、武士琉は扉を無理矢理押し開けた。
「えっ!」
武士琉は驚いた。なぜなら目の前に小さな女の子がいたのだ。
透き通った純白の肌色。悪魔の世界にありそうな紅の月が反射したかのような赤い眼。薔薇のような紫色の髪。
その見た目は人間ではなかった。明らかに魔族寄りの見た目だ。
だがその子は鎖で縛られており、涙を流してその暗い一室に閉じ籠っていた。
「だい……じょうぶ?」
武士琉はおそるおそる話しかける。
「た……助けて」
女の子は泣きながら助けを求めてきた。
その表情は嘘をついてるようには思えなかった。
武士琉は腰に差してある刀を抜き、その刀で少女を縛る固い鎖をいとも容易く斬り裂いてみせた。少女は長い間縛られていた鎖から抜けた解放感に染まり、武士琉を見る。
「おいで」
「うん」
女の子は少しずつ近づいてくる。
武士琉は周りに警戒しつつ、女の子を抱える。
「外に出よう」
「うん」
武士琉は四階へ降りる。
だが……
「よー、武士よ。今からお前の首を貰う」
「デュラハン!」
女の子を抱える武士琉の前に、黒い剣を握りしめたデュラハンが立ちはだかる。
「修羅場じゃねーか」
「魔族を、なめんなよ」
ーー0時50分。
デュラハンと武士琉の一騎討ちが始まる……




