第10話 桶狭間 終戦
1560年6月12日。15時00分。丸根砦にて。
俺達は織田信長がいるであろう鷲津砦に向かう。
俺達の戦力は今川軍1万5000人。そして俺、つまりは武士琉、森蘭丸、前田利家。
もともとの今川軍は3万。つまり俺達織田軍は3000で1万5000という数を倒したのだ。きっとこれまで行われた戦ですら、それほどの戦力差を覆す戦はなかったであろう。
そう、我らこそが最強の信長軍である。
その感嘆の風呂に浸かりたい気持ちもあったが、この戦いで多くの者を失ってしまった。
だから僕たちは少しの間立ち止まり、死んでしまった者たちへと追悼を捧げた。
いつか生まれ変わったのなら、魔王から世界を取り戻せていますように、そう願い、僕たちは馬を走らせる。
ーーだがその頃、鷲津砦にて、
信長は多くの兵を集め、砦の外で馬に乗って空を見上げていた。晴れ間が見え、そして太陽の光であろう何かが天から地へと届いている。その光に信長は照らされながら、刀を天に掲げて兵たちに言い放った。
「我々は今から今川の城を討つ」
「ですが信長様。また城を攻めれば……」
秀吉は信長の発言に困惑する。
信長を止めようと何とか頭を働かせ、弁を唱える。
「秀吉。我々はこの砦を放棄する」
「砦を……」
簡単に砦を放棄すると言った信長に困惑し、秀吉は足を滴り流す。が、信長はすぐに言葉を続けた。
「安心しろ。実はな、良い城を見つけたんだよ」
「良い……城?」
秀吉は思わず首を傾げる。
それもそのはず、人が放棄した城など、普通は盗賊らの根城にされないために燃やすのが必然。だが信長は良い城を見つけたと言った。そてはつまり……。
「丸根砦とは逆の方向だ。丸根砦と鷲津砦は捨てる。我々には犠牲が必要だ。だから……振り返らず進め。魔王を倒すため、行くぞ」
兵たちは少し困惑しつつも、声を荒げ、自分達を喝采する。
「をおおおおおおおお」
だがどれだけ自分を誤魔化そうとも、兵たちは信長が一体何をしようとしているのかは解らないでいた。
信長の知略、それを信じ、兵たちはゆっくりと歩む信長の背中を不安げに見つめる。
彼が一体何をしようとしているのか、それは長年の側近である秀吉ですら解らないこと。だから秀吉たちは信長をただただ信じ、足を静かに進めていく。
ーーいつか、忌まわしき"魔王"を討つために。
それだけを信じ、彼らは進む。鷲津砦にいた信長軍は丸根砦とは逆のとある城に進む。
今川達は鷲津砦に
織田達はある城に
二人の武士はすれ違う……




