第9話 魔王への怒り
1560年6月12日。14時55分。
「着いた。丸根砦」
「行きましょう。武士琉殿」
「あー、蘭丸。気を付けろよ」
武士琉、森蘭丸、前田利家、今川義元の四人は丸根砦に足を踏み入れた。
丸根砦の前には、今川軍の兵の死体がごろごろと転がっていた。だが丸根砦の内部には、今川軍の兵死体が一つも無かった。
武士琉たちは丸根砦の内部を徘徊し、そして一人の武士を目にする。
「佐久間……」
佐久間盛重は城の真ん中に立っていた。
彼は一人で5000人を相手にし…勝った。誰一人として城のなかに入れず。
「佐久間……」
「武士琉……蘭丸……利家……。やったぞ。護った……。丸根砦を……」
佐久間盛重。十九歳にして五千人の兵を相手に退けをとらず、丸根砦を護りきった。享年一九歳。
彼は……武士だ。
織田信長の二つの砦は今川軍という圧倒的戦力に攻められても尚、砦を占領させはしなかった。
ある者は命を懸けて。ある者は子供のために。
ここは戦場。誰もが死に、誰もが戦う。
その中で鈍く光る光。彼らは本物の武士である。
「なあ、今川……」
「すまない……」
「武士琉殿……」
「………………」
嫌なんだ……。仲間を失うのは。
武士琉は込み上げてくる喪失感と欠けた心の痛みを感じ、拳を握って震える拳を抑えるようにして服の裾を握る。
「今川義元。俺達をもう裏切らないと誓え」
「分かっている。私はもう仲間を苦しませたくない。だから……私は魔王を倒す。命に変えても……だ」
「いい覚悟だ」
「武士琉殿。外に今川軍の騎兵が……」
蘭丸の声にふと視線を窓に向けた今川は、この城へと進んでいる騎兵たちを見る。今川は窓のすぐ近くへ行き、騎兵達に向かって叫ぶ。
「いいか、お前ら。今から俺達は魔王を倒すため、信長側に寝返る。ついてこれない者はいい。だが、我と命を燃やす者はついてこい」
「…………」
皆が沈黙し考える。
「すまない。では、お前たちは魔王にしたがっていろ。ただ魔王のいいなりになってろ。魔王がこの国を支配するのに協力してやれ。家族が殺されようと、仲間が殺されようと、魔王にしたがっていろ。どうせお前らは……ろくでなしなんだから」
その言葉は自分に向けても言っていたのだろう。
それに感化された武士たちは、馬の足を止めた。
「ぐあぁぁぁ」
突如、騎兵とともに行動していたスケルトンが悲鳴をあげる。
「今川様。私はあなたについていきます。この雑魚どもに支配されるくらいなら、我々が支配します」
「本多……」
がたいのいい大男は、大剣でスケルトンを蹴散らしながら、気合いの入った声で叫ぶ。
「皆の者。今こそ、魔王を滅ぼせ」
「をおおおおおおおおおお」
武士達の勇気とともに、その場にいたスケルトンは一掃される。
今始まる。
ーー魔王よ。覚えておけ。世界は、我々が創る。




