すれ違い
俺と橘さんの2人しかいないぼっち部の部屋は静かだった。ここに自分から連れて来たとはいえ、いざ話そうとしたら緊張して言葉が出ない。ショッピングモールでクラスの女子に言った時のような勇気が欲しい。いや、勇気が欲しいのもそうだが、それ以上に自分から橘さんの手を握ってここまで来た自分の行動の恥ずかしさ、愚かさに後悔していた。
あの場所では話せる内容では無かったからぼっち部に来たのはいいが、手を繋いで来たというのがまずかった。これが普通だったら「きゃー!」と叫ばれ、男達に囲まれタコ殴りにされた後、「最低」と吐き捨てられ警察に連れて行かれた後退学まで行っていただろう。しかし、橘さんは叫ばないどころか嫌じゃないと言ってくれた。これは俺の事が好きなのではないかとまで思ってしまう。だが俺は騙されない。俺は知っている。こういう時は必ず『すれ違い』があるのだ。ラブコメ漫画で勉強したから間違いない。
確かに俺は「ごめん」と言った。それは橘さんの手を繋いでぼっち部まで来てしまった事に対してだ。しかし、明言はしていない。橘さんも「大丈夫」とは言ったが、何に対して大丈夫だったかは言っていない。つまり、真相はこうだ。
「手を繋いじゃってごめん!橘さんは嫌だったよね?」
「嫌?突然ぼっち部に連れて来た事を久保君は言っているのかな?ぼっち部の部室は好きだし、大丈夫!」
これだ、これで間違いない。「むしろ……」の後ろの言葉ははっきりと聞こえていなかったが、きっと「なんで私の手を繋いだの?私の事が好きなの?」と言っていたのだろう。ありがとうラブコメ漫画。読んで無かったら今頃勘違いセクハラ男として今頃刑務所で丸坊主だった。でもこれだと反応しないと不味くね?なんか答えた方がいいのかな?
なんとか勘違い最低男のルートを避けて安心したのも束の間、橘さんを見ると凄く居心地が悪そうにしていた。それもそうだろう。好きでもない男に二人きりで手を繋がれて連れて来られて放置とは一体なんの拷問だろうか。
「あ、て、手を繋いだのは勢いというか、その橘さんの手を繋ぎたいというふしだらな気持ちで繋いだ訳じゃなくて、その……」
この空気を何とかしようと弁明をしようとするも言葉が上手く出て来ない。なんて言おうか考えていると、突然橘さんに両手を掴まれた。
「え!?何!?」
「わ、私は久保君とふしだらな気持ちでもいいから手を繋ぎたいな」
突然の橘さんの言葉に脳がパンクして顔が真っ赤になって、頭の中は真っ白になった。
少し前は1月に1話書けたら偉いの気持ちで書いていたので週1で投稿してめちゃめちゃ偉いと自分を褒めてます。もっと書けと思いますよね。私もそう思います。更新続けられるよう頑張ります。