慣れても辛いものは辛い
「橘さんは何してるかな……っと」
先生に帰れと言われたが、橘さんの事が気になって僕は教室に向かった。
「また前みたいな事になって無ければいいけど……」
教室のドアを静かに、そして少しだけ開けて中を覗いたら橘さんを見つけた。その隣では橘さんを虐めていたグループが一緒に作業していた。いや、正確には少し違う。橘さんだけグループから離れて作業していた。僕があんな事されていたら一緒に準備するどころか何もせずに帰るレベルだ。それが出来なかったとしても、同じ場所で作業するなんて以ての外だ。でも、ここで別の所でしようものなら今度はこっちがサボり扱いされてしまいそうだ。一人でする方が楽だけど、後の事を考えると……
「何してるの?久保君そんな所で立ってて」
「うわっ!」
いつの間にか横に橘さんがいて変な声を上げた。廊下に僕の声変な声が響いて恥ずかしい思いをしてしまった。
「え、あ、いや……」
橘さんを見てたなんて事を正直に言ったら、変態扱いされてしまう。言葉に詰まっていると橘さんが何かを感じ取ったのか申し訳なさそうな顔をした。
「あ、ごめんね。久保君あの人達がいると教室入りづらいよね……」
ぼっち歴が長い俺としては嫌われてもそんなに気にしないから入りづらいとかはないんだけど、その方が都合良さそうなのでそういう事にした。
「ま、まぁ……。でも橘さんは大丈夫なの?一人で作業してるみたいだけど」
「うん。全然大丈夫!一人でするのも慣れてるし」
橘さんは笑ってそう言うが僕に心配させないように言っているように聞こえた。慣れてると言っても辛いものは辛い。辛く無いと自分に言い聞かせ、大丈夫だと周りに見せる。そうやって自分は強いと信じ込み自分を守る。僕が今まで、そして今もしているように。
「橘さんちょっとこっち来て」
「え?」
僕は橘さんの手を掴んでぼっち部の部室まで走った。文化祭の準備中の今なら部室に誰もいないはず。
部室は思った通り誰もいなかった。ほっとした時、自分が今橘さんと手を繋いでいるのに気が付いた。
「あ、ご、ごめん!」
俺はすぐに橘さんから手を離した。勢いでここに来てしまったから、何も考えずに手を掴んでいたらしい。自分のやってしまった事の重大さに気が付いて恥ずかしさのあまり顔が熱くなって来た。
「大丈夫だよ。嫌じゃないし。むしろ……」
橘さんの言葉は段々と小さくなり最後まで聞こえなかったが、顔が熱くて、俺はそれどころじゃなかった。
お久しぶりです。こじーです。前回の投稿からまた日が空いてしまいました。更新が不定期でありながらもツイッターの質問箱に「続きはいつですか」と送って下さった方がいて、その言葉を貰い更新する事が出来ました。ありがとうございます。今年は投稿頻度増えるよう頑張りますのでよろしくお願いします!