いじめは解決してもめんどくさい
「ほい、久保」
先生に自販機の所まで連れて来られ、缶コーヒーを渡された。いや、俺缶コーヒー飲めないんだけど。
「あ、ありがとうございます。いただきます」
飲めないけど一応お礼は言った。
「それで、今日は何すればいいんですか?」
俺は先生に質問すると、先生は一度俺の方を見て頷いた。
「よし。じゃあ、今日は私と話をしよう」
先生は缶コーヒーを開けると、横にある椅子に座った。
「先生と話ですか?」
「あぁ。だって、お前何かあっただろ。何かあったんだったらお前の担任の先生として、見過ごす訳にはいかないからな」
先生はコーヒーを一口すすると真剣な目で俺の方を見た。
「誰からか話を聞いたんですか」
クラスでの噂、橘さん、幾らでも聞いた理由は沢山ある。
「いんや、私は誰からも聞いていないよ」
「だったら何で」
「お前の様子が何時もよりおかしかったからな。机に突っ伏して。最初は体調が悪いのかと思ったが、そうでは無いみたいだし」
俺は言葉に詰まらせた。正直先生に目を付けられるとまずい。と言うのも、俺がどう見られようと元々ぼっちの俺には何も変わらないが、橘さんが虐められたとバレてしまったら、後々面倒臭くなる。この話がクラスで流れてしまって、橘さんをパシリに使ったあいつらは怒られるかもしれない。
しかし、その後が大変だ。橘さんが先生に相談していないとして、この問題が浮き彫りになった場合、例え橘さんが言ってい無いとしても、周りからは橘さん本人が先生にチクったと思われるだろう。そうなった場合、この後も先生にバレない程度の嫌がらせが橘さんに続く事になる。
「……」
俺は何と言えばいいのか分からず下を向いて黙っていると、先生は溜息を吐いた。
「まぁ、言いたく無いなら言わなくてもいい。けどな、久保」
先生に名前を呼ばれ、俺は先生の方を見るといつもより真剣な目で俺を見ていた。
「そう言う時は大人である先生を頼れ。って言って聞いてくれたら楽なんだけどな。実際頼らないだろ?」
「まぁ……。はい」
先生を頼れだの先生に言えって言葉はよく聞く。中学生の時にも何度も聞いた言葉だ。俺は小さい声でそう答えた。
「別に怒ってる訳じゃ無いよ。頼れ無いのは当たり前だ。まぁ、頼れる程私が信頼されてないって言うのもあるかもだけどな」
先生は笑うと、それに釣られて俺も少し笑った。