私の為に
次の日、俺が学校に来た時には「クズ」「死ね」「最低」と机にペンで書かれていた。
「女子に手を挙げるのは無いよね」「あいつバカだよな」
ヒソヒソと聞こえる声に俺は何も言わずにトイレに向かった。水を流してタオルを濡らしながら小さい声で言った。
「これでいい」
誰かを助ける為には、誰かが犠牲にならなきゃならない。それこそ敵がはっきりしているくらいには。だから俺は今回悪役を買って出た。
「これの何がいいの?」
声がする方を見ると橘さんが涙を流しながら俺の方を見ていた。
「橘さん……どうしたの?ここ男子トイレだよ?」
「どうしたの?じゃ無いよ!ちょっとこっち来て!」
「ちょっと待って、机拭かなきゃ……」
「そんなの後にして!」
「あ、ちょっと!!」
橘さんが珍しく怒っている。理由はなんとなく分かる。言わずもがな自分がした事だろう。誰もいない教室に連れられて椅子に座らされた。
「あれはどう言う事なの?」
座っている僕を立っている橘さんが見下ろして僕の目を見る。僕は反射的に目を逸らした。しかし、聞いて来ると言う事は僕がした事はまだ知られて無いだろう。ここは黙秘権を使って……
「どうしてあの人達に手を出したの?」
使おうと思ったけど、もうバレてるみたいだった。黙秘権ってなんですか。
「なんでって言われても……」
理由を聞かれてもすぐには答えられなかった。橘さんの為、とは言えなかった。だって、頼まれていないから。自分勝手にやった事だから。反応に困って答えられずにいると橘さんは俺の両肩を掴んで、目を見て言った。
「私の為に……でしょ?」
「頼まれて無いから違うよ。結果的にそうなっただけ。俺がイラってしてあいつらの所に行っただけだよ」
俺は橘さんから目を逸らして答えた。目を合わせられなかった。
「それは私の事でイラってしてくれたんだよね?それは、私の為だよ」
「ちが……」
「違くない!!」
橘さんが突然大きな声を出したものだからビクッとしてしまった。
「なんで……なんで久保君はいつも自分を犠牲にするの……」
「なんでって……え?」
俺は目をこのままずっと目を逸らすつもりだったが、突然ズボンが濡れた。橘さんの方を見ると、橘さんは涙を流していた。
文化祭どこ?って感じですけど、タダで文化祭を進ませたくないのが私です。いや、ほんと。ただのリア充イベントになんかしません。なんとしてでも。