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弱い自分

「そ、そうなんだ……夢ちゃん、久保君の事好きなんだ……」


「はい……」


夢ちゃんは顔を真っ赤にしながら言った。夢ちゃんのその顔は、今まで私が見た事ない、恋する女の子の顔だった。


「まり先輩はどうなんですか?久保君の事」


夢ちゃんの言葉にドキッとした。ここで自分も好きと伝えるか。でも、言ったら夢ちゃんの邪魔をしてしまう。


「うん、久保君は優しいし、夢ちゃんと付き合っても大丈夫だと思うよ?うん!私、応援してるね!」


「ありがとうございます、まり先輩。まり先輩にそう言って貰えると、頑張れます」


夢ちゃんはにっこりと笑った。今まで彼氏を作ったこと無かった夢ちゃんの初めての恋だ。応援したい。でも、もやもやした気持ちが絡みついて離れない。


「じゃあ、私は久保君にお礼に行ってきますね」


「う、うん。私もすぐ行くから先に行ってて……」


「はい。まり先輩もお見舞いありがとうございました」


振り返って歩き出す夢ちゃんを見て、「このままじゃだめ」と心の中の私が叫んでいる。


「夢ちゃん!」


「はい?なんですか?まり先輩」


無意識に夢ちゃんの名前を呼んでいた。特に何か言おうと思ってた訳じゃないので、言葉がすぐに出なかった。


「あ……。や、やっぱりなんもないや。気をつけてね?倒れてすぐなんだから、無理はしないでね?」


「……?ありがとうございます」


夢ちゃんは首を傾げながら歩いて行った。夢ちゃんが見えなくなると何故か目頭が熱くなり、気が付くと、涙が出ていた。


「あれ?なんでだろ?涙が出てる」


何回涙を拭いても、涙はポロポロと零れた。


「あれ……おかしいな……。特に悲しい事なんて無いのに……」


心の奥底では分かっている。これは、自分も好きと言えなかった自分の不甲斐なさに出てきた涙なのだ。久保君を好きって言った夢ちゃんの気持ちの方が、私より強かったのだ。でも、認めたくない自分がいる。


「なんで、私ってこんなに弱いんだろう……。好きの一言も伝えられないなんて……」


「あれ?師匠じゃないですか?どうしたんですか?」


カムイ君の声が聞こえて、慌てて涙を拭いた。


「片岡君?い、いや、なんにも無いよ?さっき倒れてた夢ちゃんを送り出したから」


「あ、そうなんですか?僕も夢ちゃんのお見舞いに来たんですが。もう遅かったか……」


「そ、そうみたいだね……。じゃあ、私達も部室に行こっか」


私は顔を見られないように顔を伏せながら部室に向かおうとした。その時、カムイ君に手を掴まれた。


「……片岡君?」


「何かあったんですか師匠?目が腫れてますよ」


「え?嘘?分からなかったなー」


泣いてたのがバレて、慌てて目を拭いた。でも、もう遅かった。


「師匠、今は聞きませんが、困ってるなら何時でも言ってください。それが僕が師匠に出来る唯一の事なんですから」


「ありがとう……片岡君……」


私は無意識にカムイ君では無く、片岡君と呼んでいた。

今回も古里先輩視点で書かせて頂きました!今回で80話でいつの間にか!!って感じでございます。80話なのに、文字数少ないのは許して欲しいですが(汗)

これからも、よろしくお願いします!

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