あの日から(1)
今話・次話と回想シーンです。
妹と『イケメンボーイ』くんの未来を応援したいな、なんて思いながら今日の疲れを癒やそうとベッドに横になる。
別に外出をしたわけではないが、来客があるというのは気を使うし、精神的に疲れるものだ。
まして、最後にあんなやりとりがあったもんだから、尚更だ。
両手を頭と枕の間で組み、僕はいつものように天井を見つめた。
ふと過る切ない想い。
年末から今日までいろんなことがあったなと。
僕と彼女はなんとも苦しい結末になったが、妹たちには楽しい未来であってほしい。こころからそう願う、と同時に先日の親友宅でのやりとりがあった日のことを思い出していた。
あれから時折頭痛に見舞われるようになっている。
きっと疲れているのだろうと、然程気にもかけなかったが、こうやってベッドに横になっていると、また少しばかり頭痛が気になる。
あの日……。
* * *
「ああ、今日は色んなことがあったなぁ」なんて呟いて、僕はベッドの上で天井を見ながら考えていた。
彼女が結婚を取り止めただって? 親友にはああ言ったけど、内心穏やかではない。親友に言ったことも、勿論本心だ。でも、突然あんなことを聞いて……どうすればいいんだ? 時間が経つほどに、苦しくなってくる。
僕には関係ない。もう、僕には関係ないけど……。やっぱり落ち着かない。忘れたはずなのに、もう、気持ちの整理をつけたはずなのに……心が痛い。
どうして想い出さないんだろう。どうして想い出せないんだろう。考えれば考えるほど、やり場のない想いでいっぱいになる。いつまで考えても答えは出ない。
明日も早い、もう眠ろう。
そう思い、ゆっくりと目をとじた。
するとしばらくして何かに気づく。
「……」 「…………」
誰かが僕の名前を呼んでいる。
『キミは……誰?』
〈女神のようなその差し出した手〉を、僕はその日も追いかけた。顔も見えないはずなのに、どこか懐かしく、僕に安らぎを与えてくれる。顔も見えないはずなのに、その笑顔は、とても美しく感じる。
……でもその後ろ姿は、どこか哀しそうに見えた。
放っておけなくて、僕は追いかけた。ただひたすら走り続けた。
もうすぐ、もう、すぐそこなのに。届きそうで届かない姿を追い続けた。
次の朝。
目覚まし時計の凄まじい音で飛び起きた僕は、今日は何だか頭が重い。昨日、親友宅で飲み過ぎたか? ジンジャエールを? なんて、つまらないことを考えながら、身支度を整え、会社へ向かった。
お読み下さりありがとうございました。
次話「あの日から(2)」もよろしくお願いします!