またまたちょっとした騒動?(2)
『結婚を前提に付き合いたい』
そう言ったのはあの『イケメンボーイ』くんだ。
今日は妹とのデートの帰りに、父の都合に合わせてウチに立ち寄り、夕食を一緒に摂るということになっていたのだが。
まさか食事の前に突然言い出すとは。
妹も一瞬苦い顔をしていたが、もう言ってしまったからには仕方がない。
食事の並んだ食卓テーブルを前に、彼の横にちょこんと座っていた妹だが、姿勢を正し、もう一度座り直した。
僕は内心「ああ、またか」と、以前のちょっとした騒動を思い出し、目の前に並べられたいかにも美味しそうな夕食を見つめながら、「これはなかなか食事にはありつけないな」と心の中で大きなため息をついた。
彼にしてみれば重要な話なので、食事をしながら軽く済ませるわけにもいかなかったのだろう。
それなら夕食時でなく、他の時間帯にウチに来ればいいものを。
父が「よし、わかった」と素直に認めてくれるはずもないのに。
今日のデートが楽しかったのか、その勢いのままウチにやって来て言ってしまったのか。
案の定、またいつかみたいに父親の雷が落ちる。
父の言い分はこうだ。
「まだ学生で、就職もしていない。
将来どうなるかも解らないし、社会に出たら、お互いまた新たな出逢いがあるかもしれない。
それを、普通の交際ならまだしも、結婚前提などとたいそうな前提をつけて、娘の将来を縛る気か」
勿論、正論だ。
『イケメンボーイ』くんは「妹に強要はしないけど、自分はこのひととなら一生一緒にやっていけると思い、そのつもりでこれからも真剣に付き合って行きたい」と一生懸命食い下がる。
「二十歳やそこらで、ひとの一生の何が解る!」
ごもっとも。
一度火がついた、娘をまだまだ傍においておきたい父親の闘争心はなかなか収まらない。
なんとか相手をひるませて、勝ちにいきたいのだ。
父は『イケメンボーイ』くんが一瞬たじろいだのを見逃さず、続けてまくしたてた。
「まだ社会にもでていないし、人生の経験も浅い。それで娘をどうやって幸せにしていくんだ。その若さで方法を知っているとでもいうのか?」
なんとも耳の痛い話だ。
そんなことまで考えて結婚するひとなんているんだろうか。
僕はタイミングだと思うんだがな。
まあ、僕はそのタイミングをも逃してしまったのだから、なにか言えるわけではないのだが。
お読み下さりありがとうございました。
次話「またまたちょっとした騒動?(3)」もよろしくお願いします!