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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第12章 希望と絶望
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またまたちょっとした騒動?(1)

 気づけば以前にも訪れた夢の世界。

 ――全てが真っ白な世界――に佇んでいた僕。

 遠くで手招きする〈女神のようなその差し出した手〉を追いかけて、結局は以前と同じくもう少しのところで目が覚める。


 だけど、いつかこの手が届くと信じてみよう。諦めずに追いかけてみよう。そう思った。

 もう後悔しないために。




 日曜の朝。

 僕はいつものように目覚まし時計の凄まじい音で飛び起き……たわけではなく、珍しく自室のドアの外から聞こえる、柔らかく、しかし弾んだ声音によって白い世界から呼び戻された。


「おはよう。もう起きてる?」


 ん? 誰だ?

 もう少しで届きそうだったのに。

 意識が現実の世界に近づいてくる。


「ねえ、起きてる?」


 可愛い声の主の言葉に、もう少し寝かせておいてほしかった僕は答える。


「いや、まだ寝てる」


「もう! お兄ちゃん!」


 声を発したのが間違いだったか、「返事するぐらいだから起きてんじゃん」とか「早く支度して」などと続けざまにいろんな言葉を投げかけられて、もうゆっくり寝ていられない状況に。

 いや、もし妹の声を無視していたとしても、結局は僕が起きるまで喋り続けていたに違いない。


「お前、今日はデートだろ? 早くしないと遅れるんじゃないのか? 僕は予定なしだから、もう少し寝かせてくれよ」


「そうよ。だから早く起きてほしいのよ」


 なんでそうなるかな?

 僕には関係ないはずだけど?


「お前のデートと僕の早起きにどんな関係があるんだよ」


 すると妹は急に小声になり、恥ずかしそうに言う。


「今日のお弁当の味見をしてほしいの」


 は? なんで僕が?

 味見なら父でも母でもできるだろうに。


「それって、毒味ってことか?」


 寝起きのぼやけた頭がつい余計なひと言を口走らせる。

 そして僕が言葉を発するや否や、部屋のドアが勢いよく開け放たれた。


「もう! ごちゃごちゃ言ってないで早く起きて協力してよ。毒味なんて失礼な! 美味しいに決まってんじゃん」


「はいはい」


 まあ、妹の料理の腕前が見違えるように上達しているのは、昨日の夕飯で実証済みだが。

 なんというか、ものの言い方が心なしか母親に似てきた気がする。

 ……ということは、あまり長引かせない方が身のためということだな。


 僕は渋々……いや、喜んで妹が『イケメンボーイ』くんのために、腕によりをかけて作ったご馳走の味見をすべく部屋を後にした。


 リビングに行く前に、ちゃんと歯を磨いてから。

 でないと、今度は母親にまた細かい指摘をされるから。


 男はつらい生き物だ。



お読み下さりありがとうございました。


次話「またまたちょっとした騒動?(2)」もよろしくお願いします!

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