妹よ(3)
土曜日夕食時。
妹の手作りメニューに舌鼓を打っていると、母から明日はお客さんがあるとのこと。
ん?
誰だろう。
「お客さんって?」
僕がそう問うと、「むふふ」と気味悪く……いや、可愛く笑う妹。
「もしかして?」
僕のその問いにも、今度は「うふふ」とにやけ顔。
みなまでは聞くまい。
なんでも、『イケメンボーイ』くんが今度は父親に会いたいとわざわざ都合を聞いてきた、とのこと。
明日の夕方なら父は家にいるからとの返事を聞いて、明日、ふたりはデートの帰りにウチに寄って、夕飯を一緒に食べるらしい。
「あなたもそのつもりで、夕飯は家で食べなさいよ」
母の言葉に「ああ」と返したが、今の僕には日曜日に特別に出かける所なんてない。
言われなくてもウチご飯は決定事項だ。
『イケメンボーイ』くんが父に話があるって、一体どんなことだろう。
以前、方法を間違えた彼は、挽回すべく頑張るのだろうか。
また余計なことを言わなければいいが、と兄は少し心配になるのだった。
まあ、どう転んでも兄としては、可愛い妹の味方をすることも決定事項だが。
そんなことを考えながら、少し楽しみなような不安なような気持ちで今日もベッドに入る。
いつものように少し天井を見つめながら、今後のことを考えようか。
いや、なんだか今日はやけに眠いぞ。
『此処は……何処だ?』
僕は――全てが真っ白な世界――に、呆然と立ち竦んでいた。
前にも来たことのある場所だ。
あれはいつだったか……そうだ、彼女との『エピローグデート』を終えた日だ。
ということは『夢』なのか?
だとしたら、この夢はあまりに鮮明すぎる。
足元には自分の影さえもなく、眩しいほどに純白の世界でふと目を細める。
少しして、遙か向こうの『誰か』に気づく。
僕は手招きする〈女神のようなその差し出した手〉に近づいてみようと歩き出した。
どのくらい歩いただろう。随分と歩いて、やっと手が届きそうになると、遠ざかる美しい手。
純白のドレスを身に纏い、白のベールに包まれた、女神のようなその姿は、顔も見えないはずなのに、どこか懐かしく、僕に優しさと勇気を与えてくれる気がする。
顔も見えないはずなのに、その瞳は潤んでいるように……感じた。
『キミは……誰?』
〈女神のようなその差し出した手〉を、僕は追いかけることにした。追いかけて、追いかけて、追いかけてみようと思った。
いつかこの手が届くと信じてみよう。
もう後悔しないために。
そして……。
お読み下さりありがとうございました。
次話「またまたちょっとした騒動?(1)」もよろしくお願いします!