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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第12章 希望と絶望
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妹よ(3)

 土曜日夕食時。

 妹の手作りメニューに舌鼓を打っていると、母から明日はお客さんがあるとのこと。


 ん? 


 誰だろう。


「お客さんって?」


 僕がそう問うと、「むふふ」と気味悪く……いや、可愛く笑う妹。


「もしかして?」


 僕のその問いにも、今度は「うふふ」とにやけ顔。

 みなまでは聞くまい。


 なんでも、『イケメンボーイ』くんが今度は父親に会いたいとわざわざ都合を聞いてきた、とのこと。

 明日の夕方なら父は家にいるからとの返事を聞いて、明日、ふたりはデートの帰りにウチに寄って、夕飯を一緒に食べるらしい。


「あなたもそのつもりで、夕飯は家で食べなさいよ」


 母の言葉に「ああ」と返したが、今の僕には日曜日に特別に出かける所なんてない。

 言われなくてもウチご飯は決定事項だ。


『イケメンボーイ』くんが父に話があるって、一体どんなことだろう。

 以前、方法を間違えた彼は、挽回すべく頑張るのだろうか。

 また余計なことを言わなければいいが、と兄は少し心配になるのだった。


 まあ、どう転んでも兄としては、可愛い妹の味方をすることも決定事項だが。



 そんなことを考えながら、少し楽しみなような不安なような気持ちで今日もベッドに入る。


 いつものように少し天井を見つめながら、今後のことを考えようか。

 いや、なんだか今日はやけに眠いぞ。





『此処は……何処だ?』


 僕は――全てが真っ白な世界――に、呆然と立ちすくんでいた。


 前にも来たことのある場所だ。

 あれはいつだったか……そうだ、彼女との『エピローグデート』を終えた日だ。


 ということは『夢』なのか?

 だとしたら、この夢はあまりに鮮明すぎる。


 足元には自分の影さえもなく、眩しいほどに純白の世界でふと目を細める。

 少しして、遙か向こうの『誰か』に気づく。

 僕は手招きする〈女神のようなその差し出した手〉に近づいてみようと歩き出した。

 どのくらい歩いただろう。随分と歩いて、やっと手が届きそうになると、遠ざかる美しい手。


 純白のドレスを身にまとい、白のベールに包まれた、女神のようなその姿は、顔も見えないはずなのに、どこか懐かしく、僕に優しさと勇気を与えてくれる気がする。

 顔も見えないはずなのに、その瞳は潤んでいるように……感じた。


『キミは……誰?』


〈女神のようなその差し出した手〉を、僕は追いかけることにした。追いかけて、追いかけて、追いかけてみようと思った。

 いつかこの手が届くと信じてみよう。

 もう後悔しないために。


 そして……。



お読み下さりありがとうございました。


次話「またまたちょっとした騒動?(1)」もよろしくお願いします!

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