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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第12章 希望と絶望
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妹よ(2)

 ひらひらレースのエプロンに身を包んだ妹が、台所を所狭しと動き回る。

 大分手慣れてきて以前のぎこちなさとは大違いだ。


 少し前までの妹は母親に夕飯の支度を手伝ってほしいと言われても、やれ部活が忙しいだとかバイトが入ってるからだとか、いろんな理由をつけてお手伝いを回避していたが、今回は自分から進んで料理の勉強をしたいと言い出したらしい。


 僕はきっと、例の『イケメンボーイ』くんがなにか関係していると推察するが。


 なんにせよ、自分が本当にやりたいことというのは上達も早い。

 しかも楽しそうにしているのが微笑ましい。




* * *


 今日の夕食は妹が作ったということだ。


 たまごやき。


 我が家の卵焼きはひと味ちがう。

 ボウルにたまごを割り入れ、そこに塩少々、醤油少々、そして砂糖少々……。

 決して甘過ぎず、たまご本来のうま味を引き出した絶妙な味付け。

 この母の卵焼きを一度口にしたら、誰しも、もう他の卵焼きでは満足できなくなるほどの逸品だ。 


 あれから妹は夕方学校から帰ると、毎日猛特訓をしていたらしい。


 母直伝の特製たまごやき。


 妹のつくったたまごやき。


 以前のようにところどころ香ばしそうな焦げ目が個性的に輝いている、少し風変わりな一品。

 ……ではなくて、見た目はかなり美味しそうになっている。

 妹はみんなの反応が気になるようで、「早く食べろ」とせっついてくる。

 ふんわりとしていて少し照りの入った黄色は食欲をそそる。

 

 僕はこの見た目と妹の頑張りに、かなり期待をもった。


 そして箸で一切れつまみ、口に運ぶ。


 味は……見違えるようだ。


 見た目通り柔らかく、たまご本来の味を活かしたさりげない甘み。

 母のつくるそれと遜色ないほどの出来映えだ。


「美味いよ」


 僕がそう言うと、嬉しそうに目を輝かせながらも「当然」と得意げに言う妹。


「他のも食べてみて」


 妹に促されて他のメニューに目をやる。

 なんでも、今日は他のメニューも全て妹の手作りだと。


「どれどれ」なんて言いながらポテトサラダを頬ばった。


 まさか。


 上手い。


 我が家のポテトサラダも母のこだわりがあり、今までウチのポテトサラダより美味いものにお目にかかったことがない。具だくさんで、下準備に時間をかけて丁寧に作っているらしい。


 その美味いポテトサラダが妹の手で再現されているなんて。ビックリだ。


 なんでも、明日の日曜日に『イケメンボーイ』くんとのお出かけに手作り弁当を持って行くんだとさ。

 今日はその予行演習だとか。

 どうもごちそうさま。


『イケメンボーイ』くんへの想いがここに溢れているのか、と思うと微笑ましい。



お読み下さりありがとうございました。


次話「妹よ(3)」もよろしくお願いします!

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