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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第12章 希望と絶望
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妹よ(1)

 残業に追われる日々も一段落した休日、久し振りに目覚まし時計も気にせずに、ゆっくりと眠ることができた。

 日頃の仕事疲れからか熟睡できたようで、夢さえ見なかった。

 ベッドから起き上がる前に、思いっきり背伸びをすると、眠気もとれて妙にすっきりと目覚めることができた。

 いつものように眠い目をこすりながらの起床とは違い、今日はどこか清々しい気持ちだ。


 親友とはあの日、心ゆくまで話すことができたし、話しながらも次第に自分自身、心の整理もついていったように思う。

 本当は彼女のところにすぐにでも迎えに行きたい。

 でも肝心なことに蓋をしたままじゃダメだってことに、ようやく気づいたんだ。

 そして一度気になったら、もう前のような感情だけでは進んでいけないということを思い知る。


 今回のことで僕も少しは成長できたのかな。なんて思いながら僕は無造作にタオルケットを脱ぎ捨て、自室を出て階段を降りた。



 リビングに顔をだし、まずはお決まりの朝の挨拶だ。


「おはよう」


「あ、おはよう。早く顔を洗って歯を磨いてきなさい」


 これもまた母からのお決まりの言葉セリフ


 平日は身支度を整えてからリビングに行くわけだが、休日は時間的余裕もあるからまずはリビングに顔をだす。

 まあ、先に身支度を整えてから顔をだせばいいのだろうが、休日ぐらいはと油断するとこれだ。


 まったく、僕をいくつだと思っているんだ。

 そんな解りきったこと、毎回毎回言われなくとも。

 同じことを言われるのも、そろそろ卒業したい。

 なんて毎回僕も同じことを思うわけだが。


「はーい」


 とはいうものの、結局毎回同じく文句のひとつも言わずに洗面所に向かい、歯を磨く。

 親の言いなりになって『おりこうちゃん』にしている訳じゃないんだ。


 ただ面倒くさいだけ。


 「うるさいなぁ」なんてことを呟いて、どうなるのか考えるだけで結果は明白。

 それこそ、その何倍もの威力で言葉の暴風となって返ってくる。

 それを収めるのにはまあまあの労力が必要だ。


 まあ、1度くらいはどうなるのか試してみたい気もしないでもないが。

 今はそんなことで無駄な労力は使いたくない。


 波風立てずに平穏な1日を過ごしたい。それが常日頃からオレが一番望んでいること。


 普通に、穏やかに。


 そう願っていても、思うようにいかないのが人生ってもんだと、この頃は痛感しているが。




 洗面所で顔を洗い歯磨きをすませ、もう文句はないだろうとリビングへと向かう。

 ドアを入って、なにやらいつもの休日と違う様子に気づいた。


 ひらひらレースの白いエプロンに身を包んだ妹が、ポニーテールをなびかせ颯爽と台所で動き回る。

 僕は一瞬、我が目を疑った。

 母は嬉しそうに妹を見守っている様子。

 以前のぎこちなさはどこへやら。大分手慣れてきたようだ。


「大分、サマ・・になってきたな」


 僕がそう言うと妹は「まだまだだよ」と嬉しそうに言う。


 ああ、こんな光景もいいもんだなと、久しぶりにこころが和んだように感じた。



お読み下さりありがとうございました。


次話「妹よ(2)」もよろしくお願いします!

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