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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第11章 戻らない時間
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親友宅にて(6)

 彼女が結婚式を取り止めたと親友の口から聞いた。

 彼女の気持ちも聞いて、その言葉にものすごく動揺したし、こころも動かされた。

 以前の僕ならもっと安易な考えで行動したかもしれない。


 いろんな人に迷惑をかけてまで手に入れる幸せって……どうなんだろう。

 いろんな人に心配をかけたからその分幸せになって……と考えるべきか。


 以前の僕なら……。



 だけど今更そんなことを言われても、もう僕にはどうしようも。


「お前、どうする?」


 そう問いかける親友に、僕は……。


「どうするって……別に」


 別に。

 それ以外の答えはなかった。


「別にって、それでいいのか? 彼女はお前に迎えに来てほしいんじゃないのか? でも、直接言えないから、俺等の所に来たんじゃないのか?」


 そんなこと想像でしかない。


「彼女がそう言ったのか?」


「いや、そうじゃないけど」


 と親友は小声で答える。


 僕は自分の気持ちを少し話すことにした。


「彼女が結婚を取り止めたからって『はいそうですか』って、今更会いに行ける訳もないし」


 すると親友は諭すように言う。


「彼女のお見合いの話を聞いた時だって、『やめろ』って言えたはずだ。彼女もきっと、そう言ってほしかったと思うよ。だから、わざわざお前に話したんだよ」


「そうかもな」


 今思えばそうかもしれないな。でもあの時の僕は動揺してしまって、そこまで考えが及ばなかったんだ。


「解ってるんなら、どうして行動しないんだよ!」


 僕だってそうしたいよ。

 声を荒らげて言う親友に、そこまで真剣に考えてくれているのかと感謝はするが。


「……そんなに簡単じゃないんだよ」


 僕だってそうしたい。行動に移したいよ。

 でも、大事なことを忘れちゃいけないんだよ。


「どういうことだ?」


 そう。一番やっかいで、一番大事なこと。


「確かに僕は、彼女のことが好きだ。どうしようもないぐらいに。彼女も同じ気持ちだってことも知ってる」


「ならどうして!」


 忘れたくても忘れられない、一番やっかいで、一番大事なこと。



お読み下さりありがとうございました。


次話「親友宅にて(7)」もよろしくお願いします!

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