親友宅にて(6)
彼女が結婚式を取り止めたと親友の口から聞いた。
彼女の気持ちも聞いて、その言葉にものすごく動揺したし、こころも動かされた。
以前の僕ならもっと安易な考えで行動したかもしれない。
いろんな人に迷惑をかけてまで手に入れる幸せって……どうなんだろう。
いろんな人に心配をかけたからその分幸せになって……と考えるべきか。
以前の僕なら……。
だけど今更そんなことを言われても、もう僕にはどうしようも。
「お前、どうする?」
そう問いかける親友に、僕は……。
「どうするって……別に」
別に。
それ以外の答えはなかった。
「別にって、それでいいのか? 彼女はお前に迎えに来てほしいんじゃないのか? でも、直接言えないから、俺等の所に来たんじゃないのか?」
そんなこと想像でしかない。
「彼女がそう言ったのか?」
「いや、そうじゃないけど」
と親友は小声で答える。
僕は自分の気持ちを少し話すことにした。
「彼女が結婚を取り止めたからって『はいそうですか』って、今更会いに行ける訳もないし」
すると親友は諭すように言う。
「彼女のお見合いの話を聞いた時だって、『やめろ』って言えたはずだ。彼女もきっと、そう言ってほしかったと思うよ。だから、わざわざお前に話したんだよ」
「そうかもな」
今思えばそうかもしれないな。でもあの時の僕は動揺してしまって、そこまで考えが及ばなかったんだ。
「解ってるんなら、どうして行動しないんだよ!」
僕だってそうしたいよ。
声を荒らげて言う親友に、そこまで真剣に考えてくれているのかと感謝はするが。
「……そんなに簡単じゃないんだよ」
僕だってそうしたい。行動に移したいよ。
でも、大事なことを忘れちゃいけないんだよ。
「どういうことだ?」
そう。一番やっかいで、一番大事なこと。
「確かに僕は、彼女のことが好きだ。どうしようもないぐらいに。彼女も同じ気持ちだってことも知ってる」
「ならどうして!」
忘れたくても忘れられない、一番やっかいで、一番大事なこと。
お読み下さりありがとうございました。
次話「親友宅にて(7)」もよろしくお願いします!