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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第11章 戻らない時間
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親友宅にて(5)

 彼女のことについてなにか話したそうにしているのだけど、親友の、『らしくない』態度に妙な胸騒ぎをおぼえる。


 早く聞きたいような、でも聞きたくないような。

 とりあえず聞いてみないことには始まらない。


「何だよ」

 

 すると親友は、言いにくそうに話し出した。

 どうも、これが今日オレを呼び出した本題のようだ。

 

「実は……彼女、結婚式取り止めたんだよ」


 なんだって?

 8月最後の日曜日に結婚式を挙げるって言ってたのに。

 取り止めたってことは……。


「えっ、じゃあ、延期するの?」


 結婚式を取り止めるなんて、それしか理由が浮かばない。

 だが親友の返事は意外なものだった。


「いや、結婚式自体、白紙に戻したんだよ」


 なんだって?

 白紙に戻したってどういうことだ。

 もうその相手とは結婚しないということか?


 お互いあれだけの想いを乗り越えて、あの『エピローグデート』をしたっていうのに。

 結婚式に向けての、前に進んでいくための『けじめ』をつけるために。


「何があったの?」


 もう逆戻りはできない。理由が気になる。


 すると溜め息をひとつついて、親友が話し出した。


「今朝、彼女が家に来て『どうしても好きじゃない人とは、結婚できない。今更断ったら、色んな人に迷惑かけることは解っているし、相手にも申し訳ないことは解ってる。頭では理解してるけど、心が追いつかない。色々考えたけど、やっぱり結婚はできない』って言うんだ」


 僕にはどうも納得がいかない。


「そんなこと、今頃になって」


 優柔不断な僕が言うのもなんだが、多くの人に迷惑をかけるのを承知で……なんて彼女らしくない。

 好きじゃないひとと結婚しようと思ったんだろ?

 全部解った上でそう決断したんじゃないのか?


「そうだよな。まだ悩んでる段階だったら相談に乗ることもできたけど。もう断って、両親と一緒に先方に謝りにも行ったらしいよ」


 そっか。もうそこまで。


「ご両親にも、心配かけたんだな」


 僕は視線を落とした。

 すると親友は大きく息を吸い込んだと思うと、キッパリとした口調で聞いてきた。


「お前、どうする?」


 親友にそう聞かれて咄嗟に答えられる訳もない。

 寝耳に水とはこういうことを言うのか。


 ふたりで話し合い『けじめ』の『エピローグデート』までしたというのに。

 彼女が結婚を取り止めたからって、「はいそうですか」と言えるはずもなく。


 自分がどうしたいのかもすぐには答えられない。

 こころの中はどうにも複雑に糸が絡み合っているようだ。

 一体どうしたいんだ。


 僕は……。



お読み下さりありがとうございました。


次話「親友宅にて(6)」もよろしくお願いします!

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