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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第1章 オレはずっと
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花火大会(2)

『か、絡まれてる?』


 僕はシートのところに走り寄り、その中のリーダー格の男と彼女の間に割って入った。


「僕の彼女に何か用か!」


 と強い口調で、奴らを睨みつけた。向こうも睨み返してきたが、僕はひるまない。

 そう、親友にも以前言った通り、いざとなったら僕は彼女を守る。

 どんなことがあっても守ってみせる。


 少しの沈黙。


「なーんだ、彼氏がいるのかよー。それならそうと早く言ってくれりゃあいいのによー」


 吐き捨てるように言って、奴らは去って行った。


 内心ちょっとビビってはいたが、大事な彼女のため。いざとなったら守れるんだ。



「遅いよー。あの人達、一緒に花火見ようって。断っても、断ってもしつこく言ってきて、怖かったよー」


 彼女は少し目を潤ませて、僕にしがみついてきた。


「ごめんごめん。人混みで思うように前に進めなかったんだ。もう大丈夫だからね」


「うん」


「さあ、もうじき花火が上がるよ」


「うん!」


 シートに座ると、間もなく花火大会開催のアナウンスが流れ、カウントダウンが始まる。


『5・4・3・2・1』と順に数字の花火が打ち上がり、人々はそれに合わせて口々にカウントダウンを楽しむ。



 いよいよ始まった花火大会。

 色々なテーマや音楽に合わせて、大小様々の花火が打ち上がる。

 花火とともに、その説明を聞くのもまた楽しい。


 ドーンという音は、心臓に直接響いてくる。

 打ち上がるごとに『わあー』という歓声と拍手。



「わあ、きれい」


 赤や緑に照らされ、目を輝かせている彼女の横顔。

 しばらく見つめていたが、花火の上がる大きな音に紛れて、思わずこぼれてしまった。


「……好きだ」


 言うつもりのなかった言葉。


「え、何? 聞こえない。もっと大きな声で言って!」

 

 大きな声で彼女が聞き返してくる。


 花火の大きな音にかき消された言葉。

 そんなこと言えるはずもない。 


「何でもないよ!」


 僕も大きな声で答えた。


「何て言ったの?」


「何も言ってないよ」


 本人には絶対に言わない言葉。


「え、そうなの? 何か聞こえた気がしたけど」


「空耳じゃないの? それか回りの人の声だよ」


 そう言って笑った。


 本人には絶対に言えない言葉。



 面と向かってなんて、恥ずかしくてとても言えない。でも、今日の彼女はまた特別で、花火大会という場の演出もあってか、ちょっと口に出して言ってみたくなったんだ。

 ただそれだけのこと。


 本人には、絶対に言わないけど。



彼女の可愛さについ心の声がもれてしまった彼。

気持ちを上手く伝えられるのかな?


お読み下さりありがとうございました。


次話「花火大会(3)」もよろしくお願いします!


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