親友宅にて(4)
僕の優柔不断武勇伝を話し終え、それまで黙って聞いていた親友だが容赦ない言葉を言ってくれるのも、ありがたいことだと思う。だが、しばらくの沈黙のあとに徐に口を開いた親友の言葉に、僕は一瞬耳を疑った。
「でも、ヤツにはお前も彼女も傷つけられたんだし、アイコだと考えれば、少しは気分も晴れるんじゃないか?」
親友の意外な言葉に驚いた。
普段ならこんなことを口にするはずもないのに。
「いや、確かにヤツが僕と彼女にしたことには腹が立つ。だからといって、傷つけていい理由がない。
それに、傷つけられるより、傷つける方が、僕は心が痛む」
僕は自分の想いを正直に親友に話した。
すると親友は一瞬しかめた顔を、ふっと息を漏らしながら緩める。
「それを聞いて安心したよ。お前は本当に変わってない。昔のままの『いい奴』だよ」
「それって、褒めてるのか?」
「充分褒めてる」
そう言って豪快に笑う親友の、話の意図がまだ掴めていない僕だった。
僕の頭の中の『?』に気づいたのか、親友が小声で呟くように言った。
「そこまで自分を解ってるんなら、大丈夫だな。もう話しても心配ないな」
僕は親友の話の意図がまだ掴めていなくて聞き返す。
「ん?」
すると親友は苦笑いを浮かべながら、「まあ、飲め」とジンジャエールを勧めてくる。
「いや、何でもない。色々キツイこと言って悪かったな。お前の真意が知りたかったんだ」
「気にしてないよ、全部本当のことだから」
全部本当のことだ。親友に嘘偽り述べるはずもない。
こころの内を全部吐き出せる、そしてそれをちゃんと聞いてくれる親友の存在は、僕にとってはとても大きい。
いつもながら、『ありがたいなぁ』なんて思っていると、次の親友の言葉に僕の鼓動は大きく震えた。
「……それで、彼女のことだけど」
彼女の話をするのは、正直まだこころが揺らぐ。
でも、それを悟られたくなくて、親友にこれ以上心配をかけたくなくて『なにも気にしていない』素振りで答える。
「うん、来週結婚式だね」
そう、何食わぬ顔で。
「そのことなんだけど……」
珍しく親友が口籠もっている。
なにかを言いたそうだけど、言いにくそうにしている親友を見ていると、
……なぜか妙な胸騒ぎがした。
お読み下さりありがとうございました。
次話「親友宅にて(5)」もよろしくお願いします!