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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第10章 決断の時
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決断の時(7)

 たとえ彼女の代わりでもいいから、自分を僕の本当の恋人にしてほしいだなんて。

 そんなことを言うなんて、僕は無性に腹が立った。

 いや、ヤツ・・にそんなことを言わせてしまった自分に腹が立っていたのかもしれない。


『優柔不断』って漢字で書けばたったの4文字だが、その言葉が物語るものは複雑だ。

 それは自分はもちろんのこと、誰かを傷つけてしまうことにもなりかねない。そんな場合もあるのだと、今回のことで思い知った。


 でも頭では解っていてもいざその場面になったら、たとえ自分のものであっても、こころは思うとおりには動かないし動かせない。

 みんなそうなんだろうか。僕だけがそうなんだろうか。




 ただ今は、一瞬でもヤツ・・への決断を躊躇ためらった自分に嫌気が差す。

 初めから決まっていた答えを先延ばしにしても、なにも変わらない。

 そんなことは解っているはずなのに、なかなか学習しないもんだな。


 答えを先延ばしにするのは、自分の心が弱いからだ。もっと強くならなければ。

 もっと『大人』にならなければ。


 僕は今でも彼女のことを想っている。

 彼女のような女性ひとが理想だ。

 彼女以外のひとはまだ考えられない。


 叶うはずのない恋をいつまでも忘れられないなんて。

 馬鹿げてる。時間の無駄だ。さっさと忘れて先に進めばいい。

 頭ではそう思うときもあるけれど……厄介なこころがさ。そうはさせてくれないんだ。



 AI(人工知能)とは違って人間には感情がある。

 しかもそれは一筋縄ではいかないし、時にはもつれたりもする。

 一度もつれた糸(感情)はなかなかほどけないし、ほつれを解こうとすればするほど、複雑に絡み合ったりしてしまう。

 だから余計に学んだことを忘れてしまうんだ。

 『子供』なら感情のおもむくままに行動できるのに。

 そうできない僕も、少しは『大人』になったということなのかな。


 だとしたら、『大人』って……。



 いつの日か彼女のことを想い出に変えられるのだろうか。


 そのための時間って、あとどのくらい必要なのだろう。



 ふと見上げれば、いつの間にかあかね色に染まっている西の空。


 僕は親友の家に急いだ。



お読み下さりありがとうございました。


次話「戻らない時間(1)」もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 決断の時(7)まで読みました。 唐突な デートじゃないゾ が笑えました。 ヤツはすさまじくぐいぐいきますね。 エピローグデートは感動的でした。 寂しいですが……。 二人の感情の波が見え…
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