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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第10章 決断の時
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決断の時(3)

 親友からのメール。

 用件も言わずに『夕方に家に来てくれ』だなんて、なにか胸騒ぎがする。

 早めに家を出ようとしたところに、尋常でない声色でかかってきた電話。


 僕はその様子に驚いて、とにかくヤツ・・の家に急いだ。

 珍しいことに心配したんだよ。この僕がヤツ・・のことを。

 急いで駆けつけたのに……。

 ドアから顔を出した、脳天気なヤツ・・の言動に腹が立つ。


 だからだろうか。

 そんなヤツ・・と会話をしながらも、ふと浮かんでしまう。


 僕は彼女のような……。

 今更考えても仕様がないが、なにかにつけ浮かぶのは彼女のことだ。


『エピローグデート』を終えて、一応・・けじめはついた……つもり。

 だけど、あの日のことを想い出す度に胸の奥が締めつけられる。

 やっぱり僕は彼女のような女性ひとが好きなんだ。

 落ち着きがあって、思いやりがある。優しさのかたまりのような。

 いつも自分のことよりも相手のことを考えてしまう、そんな彼女。

 結果、自分が苦しむことになろうとも、相手の気持ちを優先させてしまう女性ひと


 もっと自分の想いをぶつけてほしいとも思ったが、それは僕の勝手な思いで、彼女に強要することではないし、そんな奥ゆかしい彼女だからこそ、好きにもなったのだと思う。


 彼女と比べるわけではないが、やはり自分の想いを前面に出して猛アタック……なんてされると、こちらは引いてしまう。

 ヤツ・・とは正反対の……バカだな。

 まだそんなことを考えているのか。彼女のことを。


「いいか、他の男はどうだか知らないけど、僕はそういうのは嫌いなんだ。しかも嘘までついて驚かせて」


 軽い女性おんなが好みだという男性おとこも、世の中には多いだろう。

 自分から行動を起こさなくても、相手から来てくれるなんてそんなに楽なことはない。


 だが、僕はあくまでも自分から行動を起こしたい方なんだ。

 なかなか上手く想いは告げられないし、上手く伝わるかも解らない。

 それでも受け身でなく、好きな女性ひとには男性の僕から、なんらかのアクションをしたいんだ。


 考え方が硬いと言われるかもしれないが、24年間付き合ってきた性格はそうそう変わるものでもないし、大事にしたい。


「ごめんなさい、もうしません。だからそんなに怒らないで。お詫びにコーヒー淹れるから」


 そう言うと僕の手を引っ張って、部屋に上がるように促す。

 強引なヤツ・・の態度に、つい思ってしまう。

 僕は今でも彼女のことを想っている。


 それ以外のひとはまだ考えられない。


「なにもなかったのならよかった。もう行くよ」


 彼女のような女性ひとが理想だ。


「怒ってるの?」


 彼女のことを想い出に変えられるのだろうか。


「いや」


 そのための時間って、どのくらい必要なのだろう。



お読み下さりありがとうございました。


次話「決断の時(4)」もよろしくお願いします!

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