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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第10章 決断の時
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決断の時(2)

 親友からの呼び出しメール。

『夕方に来てくれ』だなんて、何があったのだろうと気になり少し早めに家を出ることにした。

 そのとき。僕のスマホから着信音が静かな部屋に鳴り響く。

 一瞬ドキリとしたが取りあえず電話にでてみる。


 四角い機械仕掛けの箱の向こうから聞こえる尋常ではないヤツ・・の声色に、状況を聞くのも忘れて電話を切ると、思わず部屋を飛び出した。


 そろそろヤツ・・との関係を何とかしようと思っていた矢先のことだった。

 何があったんだ。


 親友との約束は夕方だ。今から急いでヤツ・・の家に向かい、状況を把握してからでも間に合うだろう。もしなにかあるならば、親友には申し訳ないが連絡して少し時間をずらしてもらおう。

 そんなことを考えながらも、ようやくヤツ・・の住むマンションに着いて、エレベーターのボタンを押す。


 ヤツ・・のことは恋人とは名ばかりの、実質友達以上恋人未満としか考えられない。

 今までずっとそう思っていた。ヤツ・・のことは嫌いではないが、特別・・に好きでもない。

 だから仮にヤツ・・になにかあったとしても、それほど心配することもないと思っていた。

 なのに、電話を切ってからずっと気になっている。


 無事でいるように。


 正直自分でもびっくりしている。

 彼女に対してなら文句なしにそう思い、駆けつける。

 だけど、電話をかけてきたのはヤツ・・だよ。

 そんな風に思う日がくるなんて、考えてもいなかった。


 自分の感情に驚きながらも、部屋のインターホンを鳴らす。

 

 少しの沈黙。応答を待つ間も緊張が走る。


 しばらくして玄関の鍵を開ける音がしたかと思うと、ドアが開いた。



 


「はーい」


 脳天気な返事とともに、開かれた玄関のドア。

 あっけにとられながらも、僕は問いかける。


「お前一体どうしたんだ? あんな電話かけてくるから、びっくりしたじゃないか」


「ふふっ、心配してくれたんだ」


 余裕顔で笑う態度に少しあきれながらも、状況がイマイチ飲み込めないでいる。


「当り前だろ! で、何があったんだ?」


「何も」


「はあ? 何考えてんだ。こっちは慌てて飛び出してきたんだぞ」


 どういうつもりなんだ?


「ああでも言わないと、お家に来てくれないんだもん」


 ヤツ・・の元気そうな顔を見て安心したのと同時に、自分勝手な言動に腹が立つ。


「いい加減にしろよ。結婚前の女が、一人暮らしの部屋に軽々しく男を呼ぶもんじゃない! 何もないんなら帰る」


 僕はそういうところにはこだわるタイプなんだよ。

 積極的すぎるのはかえって引いてしまう。軽い女性おんなに思えてしまうからだ。


「あ、待って、ごめんなさい。そんなに怒らなくても……」


 これが怒らずにいられるだろうか。



お読み下さりありがとうございました。


次話「決断の時(3)」もよろしくお願いします!

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