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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第1章 オレはずっと
8/110

花火大会(1)

 8月の第一土曜日。

 今日は待ちに待った花火大会だ。

 慣れない浴衣を着て、夕方に歩いて15分。彼女を家まで迎えに行く。


 ちょっと高鳴る鼓動を抑えつつ、インターホンに手を伸ばす。


 ピンポーン


「はーい」


 玄関から浴衣姿の彼女が出てきた。

 ドアのところでにっこり微笑んで、下駄をカランコロンと鳴らしながら、玄関ポーチを小走りし、門の外で待つ僕のところまでやって来る。ゆっくりと門を開け、少し照れくさそうに笑いながらも、


「どう、似合う?」


 と、その場でクルッと回ってポーズを決めている彼女。


「あ、ああ」


 いつもとは違うその姿に、少しドキッとして、ついぶっきらぼうな返事をしてしまう。


 彼女は、紺地に細い白のストライプ、そして所々に小さな淡い色合いの花柄が入っている浴衣に、ピンクの帯を蝶結びにしている。

 髪は、いつものサラサラロングヘアをアップにして、1つ付けている可愛い花のついたかんざしがとても似合っている。

 ……その上うなじの後れ毛が妙に色っぽい。


 リップをつけた唇は、プルプルッとしていて、白い肌にほんのり紅くなったほっぺ。

 ううう~、可愛すぎるぅ~。


「じゃ、行こうか」


 こころの声とは裏腹に平静を装いながら彼女の手を取り、そのまま手をつないで花火大会の会場まで歩いた。


 この花火大会は、川を挟んだ2市の合同で開催されていて、地元の企業も多く協賛している大規模なものだ。会場には多くの出店も出ていて、まだ開始1時間前だというのにかなり混雑している。

 一通り出店を見て回って、12個入りのたこ焼きを1パック買い、2人で半分こすることにした。


 空いているスペースに持参したシートを敷いて座る。


「いっただきまーす」


 元気よく熱々のたこ焼きを、一口でパクッといった時の熱さといったら、目を見開いて、その場で足をジタバタさせてしまうほどだ。


 その様子を見ていた彼女は、笑い転げながらも可愛いことを言ってくれる。


「ちゃんとフーフーした方がいいよ」


 そう言いながら自分も、1つのたこ焼きを爪楊枝で半分にして、フーフーしながら食べている。

 あまりに可愛いその仕草にドキッとしながらも、それを悟られまいとまた平静を装う。


「熱いものは、熱いまま食べた方がおいしいんだ!」


 僕は痩せ我慢をして、また一口でパクッと放り込む。


「あぢっ!」


 案の定、上顎うわあごに水膨れができた。


「大丈夫?」


 本気で心配して覗き込んでくる上目づかいが、また僕の心を動揺させる。


「大丈夫、大丈夫、普通、普通」


 ばつが悪くて、何が大丈夫で、何が普通か解らない返事をするしかない。


 隣でフーフーしながら、一生懸命熱々のたこ焼きと真剣に格闘している彼女の姿は、思わずギューッと抱きしめたくなるほどに愛おしい。




 そうこうしていると、花火大会開催30分前のアナウンスが流れる。

 僕は食べ終わったたこ焼きパックをゴミ箱に捨てるため、「ちょっと待っててね」と彼女を1人シートに残しその場を離れた。


 しばらくして戻ると、彼女の回りをちょっとヤンチャそうな3人の男が囲んで、何か一方的に言っているではないか。彼女は困った様子で、首を横に振っている。


『か、絡まれてる?』



お読み下さりありがとうございます。


次話「花火大会(2)」もよろしくお願いします!

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