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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第10章 決断の時
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決断の時(1)

 それからの日々は、平穏で無音な毎日だった。心にぽっかりと空いた穴は大きすぎて、なかなか埋められそうにない。彼女以上の女性ひととは、もうめぐり逢うことはないだろう。

 これから過ぎてゆく時間が、僕の心を癒やしてくれるのだろうか。




* * *


 8月も半ばを過ぎ、彼女の結婚式の日が刻一刻と迫ってくる。

 今更考えても仕方のないことだと解っていながらも、その日を知ってしまったからにはこころ穏やかに日々を過ごして……というわけにはいかない。


 往生際の悪い自分に情けなさを感じながらも、もうどうすることもできずにいる。

 そんなもやもやも、時間と共に過ぎ去ってくれるのをただ待つことしかできない。

 やっぱ僕はダメなヤツだな。

 今となればそれはある意味、僕の専売特許か、と言いたくなる。


 いつの日か全てを飲み込んで流してゆける『大人』になれるのだろうか。




 残暑厳しい日曜の午後、久々に親友からメールがきた。


 ――話がある。今日夕方家に来られるか?


 どうしたんだ、何かあったのか?――


 ――とにかく来てくれ


 解った――



 一体何があったのだろう。

 用件も言わずにただ『来てくれ』だなんて。アイツらしくない。

 学生時代とは違い、お互い仕事も忙しいし、親友には彼女ちゃんと子供ちゃんとの家庭もある。

 なのに突然家に来るようにだなんて。なにか胸騒ぎがする。

 彼女ちゃんとの間になにかあったのだろうか。


 電話では話せないことって何なのだろう。


 ゆっくりとその時間がくるのを自室で待っているだけなんて、とてもできそうにない。

 親友達になにかあったのなら、今まで世話になった分、今度は僕が力になりたい。

 それこそ、自分のことよりも優先させたい。


 そんな気持ちで少し早めに家を出ようか、と腰を上げる。

 部屋のドアノブに手をかけたときに、今度は電話が鳴った。


 親友からの連絡かと、急いでポケットからスマホを取り出し名前を確認する。


 ……ヤツ・・からだ。


 こんな時になんだと、少し鬱陶うっとうしい気もしたが、それはこちらの事情でヤツ・・にはなんの関係もないことだ。

 無視をするのも気がとがめるので、気を取り直して電話に出ることにした。


「もしもし」


『あ、大変なの。今すぐ来て!』


「どうした、今どこだ?」


『私のお家。とにかく早く来て!』


「解った、すぐ行く」


 尋常ではないヤツ・・の声色に、状況を聞くのも忘れて電話を切ると、思わず部屋を飛び出した。


 そろそろヤツ・・との関係を何とかしようと思っていた矢先のことだった。

 何があったんだ。



お読み下さりありがとうございました。


次話「決断の時(2)」もよろしくお願いします!

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