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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第10章 決断の時
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平穏? (2)

 目覚まし時計の凄まじい音で飛び起きた僕は、父、母、妹と4人揃って朝食を摂るために、いつものように身支度を整え階下に降りたわけだが、そこでいつもと違う光景に我が目を疑った。


 きっと妹の彼氏である『イケメンボーイ』くんのために、お弁当でも作ろうと料理の勉強を始めたのだろう。真っ白いひらひらレースのエプロンに高い位置でまとめたポニーテールをひるがえし、颯爽とフライパンとフライ返しを翻……してはいないが、悪戦苦闘している様子はうかがえる。


 多少の不安と少々の期待を胸に出来上がりを待つ。



 結局時間の都合で残りは母親が作ってくれたけど、また明日も挑戦するとやる気満々なご様子。

 母が席についたところで食事が始まる。


「いただきまーす」


 全員でいたたきますの挨拶をすませ、和の惣菜で彩られた朝食に舌鼓を打つ。

 だがなぜかみんな『それ』にはなかなか手をつけない。

 ところどころ香ばしそうな焦げ目が個性的に輝いている、少し風変わりな一品。

 妹はみんなの反応が気になるようで、「早く食べろ」とせっついてくる。



 料理上手な母の卵焼きは絶品だ。


 我が家の卵焼きはひと味ちがう。

 ボウルにたまごを割り入れ、そこに塩少々、醤油少々、そして砂糖少々……。

 決して甘過ぎず、たまご本来のうま味を引き出した絶妙な味付け。

 この母の卵焼きを一度口にしたら、誰しも、もう他の卵焼きでは満足できなくなるほどの逸品だ。 


 母のご自慢の卵焼きを伝授してもらっているのだから、こちらとしても期待してしまう。


 それから、ところどころ香ばしそうな焦げ目が個性的に覗いている卵焼きを……。

 見た目は少々不格好だが、愛情はたっぷりと注がれているであろう卵焼きを頬張る。


 うん。まあ、そうだな。

 甘々な感じからすると、愛情と砂糖はたっぷりと入っているのだろう。

 みなまでは言うまい。


 大騒ぎして時間をかけて我が妹が……いや、腕によりをかけて一生懸命作ってくれた朝食の一品。

 まあ、あれだな。初めて作ったにしては上出来……とはとても言えないような代物しろものだったが、妹が作ってくれたという事実だけでも、兄としては嬉しいもの。


 明日は一体どんな卵焼きがでてくるのやら。

 楽しみなような、不安なような。



「ごちそうさまでした」


 食事の前後の挨拶は必ずしなければならない。そう、感謝を込めて。



 お腹もいっぱいになり、鞄に弁当を詰め込んで今日も1日元気に頑張ろうと会社へ向かう。


 平穏で無音な日常へと向かう。



お読み下さりありがとうございました。


次話「決断の時(1)」もよろしくお願いします!

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