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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第10章 決断の時
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今日の終わりに

『さよなら』にも、色んな形があるんだな。

 彼女を家の近くまで送り、笑顔で見送った。

 その後の自宅までの時間が、やけに長く感じられた。


 抜け殻のような体をベッドに放り込んで、天井を見つめる。

 あっという間に通りすぎていってしまった今日という日。

 楽しくも儚く切ない夢のような僕の想い出。

 今日の彼女を、いや、僕の知っている限りの全ての彼女を、頭に焼き付けておこう。心に刻んでおこう。そう思う。


 今日がくるまでは少し楽しみなところもあったが、今日が終わってしまえば「もっとああすればよかった」とか「こうすればよかった」「もっといろんな話をすればよかった」と、今更考えても仕方のないことばかり浮かんでくる。

 僕の悪いところ。


『エピローグデート』……か。

 他人から見れば、馬鹿げているかもしれない。けど……僕達には必要だった、けじめのデート。本当にけじめがついたのか? 余計に辛くなっただけじゃないのか?


 彼女はどうだったんだろう。


 お互いに自分の本当の気持ちを言い合って、さよならして……。それで本当にけじめってつくのか? ひとの心ってそんなに簡単なものなのか?


『けじめ』って何だ!



「ふぅ」

 大きくひと息ついた。


 けじめって何だ……。


 元気を出して、明日も頑張る……か。




 僕は穴がくほど見つめていた白い天井に別れを告げ、今日という日に別れを言おう。

 また明日を頑張るために、両まぶたを重ねる。


 しばらくはいろいろと思うところもあったが、いつの間にか眠っていたようだ。



『此処は……何処だ?』


 僕は――全てが真っ白な世界――に、呆然と立ちすくんでいた。

 足元には自分の影さえもなく、眩しいほどに純白の世界で、遙か向こうの『誰か』に気づく。手招きする〈女神のようなその差し出した手〉に近づいてみようと歩き出した。随分と歩いて、やっと手が届きそうになると、遠ざかる美しい手。


 純白のドレスを身にまとい、白のベールに包まれた、女神のようなその姿は、顔も見えないはずなのに、どこか懐かしく、僕に優しさと勇気を与えてくれる気がする。

 顔も見えないはずなのに、その瞳は潤んでいるように感じた。


『キミは……誰?』


〈女神のようなその差し出した手〉を、僕は追いかけることにした。追いかけて、追いかけて、追いかけてみようと思った。

 いつかこの手が届くと信じてみよう。

 もう後悔しないために。


 そして……。



 目覚まし時計の凄まじい音で飛び起きた僕は、いつものように身支度を整え、会社に向かう。

 平穏で無気力な1日が今日も始まるのか。



今話から新章、『第10章 決断の時』に入りました。


お読み下さりありがとうございました。

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