表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第1章 オレはずっと
7/110

本人には絶対に言わない(3) 

 それから親友と僕は、彼女たちにあっちこっち連れ回され、買い物に付き合わされ、荷物も持たされ……と大いにこきつかわれた。


 正直かなり参った。女子の買い物は、とにかく長い。

 品物を選んでいる時間より、喋っている時間の方が長いんじゃないかな。

 ひとつの商品を手にとっては可愛いとか素敵とか。

 たまにピョンピョン跳びはねてみたり……。

 ああだこうだと口の方が忙しそうだ。




 帰り道。

 今日はお目当てのものをゲットできたと、楽しげに前を歩く女子たちを、親友と僕は微笑ましく見ながら後を行く。


「今日はありがとな」


 嬉しそうな親友の言葉に、僕も嬉しくなった。


「うん。彼女ちゃん元気になってよかったな」


「ああ。俺はあいつの元気溌剌げんきはつらつなところが好きなんだよな。見てるだけでこっちもつい笑顔になるっていうか、元気をもらえるっていうか。なんか嫌なことがあっても『ま、いっか』って、気にしなくなるっていうか」


「そうだな。いつも明るい彼女ちゃんには助けられるところがあるなぁ」


「お前の彼女も面白いよな。いつも冷静で、しっかりしてて、何でもテキパキとこなすのに、たまにドジで、おっちょこちょいなところもある」


「僕は彼女のそういうところが好きなんだよ。それといつでも、誰にでも優しいし。明るいし」


「それに可愛いし。だろ?」


「言わずもがな」


「言うよな~」


 それに僕だけが知ってる、泣き虫な彼女。


「僕は彼女の存在全てが、大好きなんだよ」


 なんて、彼女には恥ずかしくて言わないような言葉も、親友の前では素直に言えるから不思議だ。


「おうおう、言ってくれるねぇ。なにのろけちゃってんだよ」


「本当に思ってることを言っただけだよ。彼女には言えないけどね」


「俺はいつも言ってるゾー。伝えたい時にちゃーんとな。ハッハッハッハッ」


 なんか想像できる。


「僕はこの気持ちを大切にしたいんだ。心の中にいつも彼女が溢れてる。……こんなこと恥ずかしくって、本人に直接言える訳ないだろ! 口が裂けても言わない」


「お前らしいな。クソ真面目で、一生懸命で、シャイで、ちょっと笑える」


「ちょっと笑えるって何だよ!」


「そういうすぐムキになるところだよ。肝心なところがちょっと抜けてて、ズッコケる時があるってこと」


「なに人の分析してんだよ! ……でも、自分でもそこは直したいよな」


「いいや、お前はそのままでいいと思うよ。でも、恥ずかしいとか言ってて、彼女のこと守れんのか?」


「いざとなればね」


 そう、いざとなれば僕だって。


 いつもはバカばっかり言ってふざけてるけど、誰よりも熱く語り、何かあると一番に駆けつけてみんなを助けてくれる。そして僕が悩んだりした時には、的確な助言をくれる。そんな親友には、感謝している。

 

 本人には、絶対に言わないけど。


 ああ、この4人の関係がいつまでも変わることなく、ずっと続くといいなぁ、とそのとき漠然と思った。






 今日も平穏な1日が終わろうとしている。

 疲れた体をベッドに投げやると、安堵感からかすぐに眠りについた。






 『此処は……何処だ?』


 僕は――全てが真っ白な世界――に呆然と佇んでいる。

 足元には自分の影さえも無く、眩しいほどに純白の世界で、気づくと遙か向こうの〈女神のようなその差し出した手〉を追いかけている。


〈女神のようなその差し出した手〉は、掴もうとすると遠ざかる。

 純白のドレスを身にまとい、白のベールに包まれた女神のようなその姿は、一定の距離をおいてオレから遠ざかる。


 『君は……誰?』


 心の中で問いかけても、誰も答えるはずもない。

 もしも声に出してしまったら、消えてしまいそうで……それが怖かった。


 僕は敬意を込めてこの場所を、『女神の居所きょしょ』と名付けた。



お読み下さりありがとうございました。


次話「花火大会(1)」もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ