やっぱり、僕は……。(2)
7月の終わり。
彼女の結婚式の招待状に、欠席と返事を出した。
6月に招待状が届いていたが、すぐに返事を出すことはできなかった。
答えは既に決まっていたというのに。
やっぱり僕は大人にはなりきれない。
彼女の幸せを見届けたい気持ちもあるが、平気な顔で出席出来るほど大人じゃない。
結局、自分の気持ちを優先したんだ。
そういうのを『子供』っていうのかな。
世間一般でいうところの24歳って、もっと大人なのだろうか。
十代の頃は24歳って随分と大人のイメージがあって、自分がその年齢になったらきっと考え方も行動も、その当時よりも成長しているだろうと思っていたけれど。
実際自分がその年齢に達しても、高校生の頃とあんまり変わっていない気がする。
年だけとって、中身は伴っていないのか?
いや、違う。
きっと人間はいくつになっても、こんな風に感じるのだろうと思う。
30歳になっても、40歳になっても。そんな気がする。
だって、自分自身のことなんて、自分が一番解らないものなのだから。
今の僕が成長したかどうかなんて、解るはずもない。
ただ、あの頃よりも経験を積んだ分、分別はあって、常識も身についた。
そしてあの頃よりもいろんな経験を積んだ分……多少はズルくなった気がする。
それが『大人』なのだろうか。
* * *
暫くして、彼女から電話があった。
嬉しい反面、切なくもある彼女の名前をスマホで確認し、少し躊躇いながらも電話に出る。
「もしもし」
『あ、私』
久しぶりに聞く彼女の声は、
「うん」
『欠席のハガキ、届いた』
嬉しくもあるが、やはり僕の心を締めつける。
「ごめんね。やっぱ無理だ」
『そっか……』
「うん」
暫しの沈黙のあと、彼女は話題を変えるべく、わざと元気そうな声で話す。
『エピローグデートだけど』
エピローグデート。
明日に向かって一歩を踏み出すための、『けじめ』のデート。
物語の終わり。
「うん」
けじめ。
『会社も今週で退職するし、来週あたりはどうかな?』
哀しいデートに違いない。だけど。
もう引き返すことはできない。
「いいよ。月末は忙しいけど、月初なら休める」
なら、ちゃんとけじめを。
『え……』
「土・日は婚約者の人と色々決めることあるでしょ。それに平日の方が混んでないだろうし」
優柔不断は卒業しよう。
『いいの?』
「当り前だろ。キミのためだ。いや僕たちのため。お互いに新しい一歩を踏み出すためだ。いつがいい?」
ちゃんとけじめを。
『じゃあ、来週の水曜日はどう?』
「O.K.どこに行きたい?」
けじめのデート。
『ちょっと遠出がしたい。水族館に行って、おいしい食事をして、あと夕陽と夜景が見たい!』
彼女の楽しそうな声音に嬉しい気持ちもあるが。
「ハハッ、欲張りだなぁ。じゃあドライブがてら全部行こう。プラン考えておくよ」
きっと……。
『わぁー、楽しみ~』
切ないデートに違いない。
お読み下さりありがとうございました。
次話「『エピローグデート』(1)」もよろしくお願いします!