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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第8章 優柔不断
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やっぱり、僕は……。(2)

 7月の終わり。

 彼女の結婚式の招待状に、欠席と返事を出した。


 6月に招待状が届いていたが、すぐに返事を出すことはできなかった。

 答えは既に決まっていたというのに。


 やっぱり僕は大人にはなりきれない。

 彼女の幸せを見届けたい気持ちもあるが、平気な顔で出席出来るほど大人じゃない。

 結局、自分の気持ちを優先したんだ。

 そういうのを『子供』っていうのかな。


 世間一般でいうところの24歳って、もっと大人なのだろうか。

 十代の頃は24歳って随分と大人のイメージがあって、自分がその年齢になったらきっと考え方も行動も、その当時よりも成長しているだろうと思っていたけれど。

 実際自分がその年齢に達しても、高校生の頃とあんまり変わっていない気がする。


 年だけとって、中身は伴っていないのか?


 いや、違う。

 きっと人間はいくつになっても、こんな風に感じるのだろうと思う。

 30歳になっても、40歳になっても。そんな気がする。

 だって、自分自身のことなんて、自分が一番解らないものなのだから。


 今の僕が成長したかどうかなんて、解るはずもない。

 ただ、あの頃よりも経験を積んだ分、分別はあって、常識も身についた。

 そしてあの頃よりもいろんな経験を積んだ分……多少はズルくなった気がする。


 それが『大人』なのだろうか。




* * *


 暫くして、彼女から電話があった。

 嬉しい反面、切なくもある彼女の名前をスマホで確認し、少し躊躇ためらいながらも電話に出る。


「もしもし」


『あ、私』


 久しぶりに聞く彼女の声は、


「うん」


『欠席のハガキ、届いた』


 嬉しくもあるが、やはり僕の心を締めつける。


「ごめんね。やっぱ無理だ」


『そっか……』


「うん」


 しばしの沈黙のあと、彼女は話題を変えるべく、わざと元気そうな声で話す。


『エピローグデートだけど』


 エピローグデート。

 明日に向かって一歩を踏み出すための、『けじめ』のデート。

 物語の終わり。


「うん」


 けじめ。


『会社も今週で退職するし、来週あたりはどうかな?』


 哀しいデートに違いない。だけど。

 もう引き返すことはできない。


「いいよ。月末は忙しいけど、月初なら休める」


 なら、ちゃんとけじめを。


『え……』


「土・日は婚約者の人と色々決めることあるでしょ。それに平日の方が混んでないだろうし」


 優柔不断は卒業しよう。


『いいの?』


「当り前だろ。キミのためだ。いや僕たちのため。お互いに新しい一歩を踏み出すためだ。いつがいい?」


 ちゃんとけじめを。


『じゃあ、来週の水曜日はどう?』


「O.K.どこに行きたい?」


 けじめのデート。


『ちょっと遠出がしたい。水族館に行って、おいしい食事をして、あと夕陽と夜景が見たい!』


 彼女の楽しそうな声音に嬉しい気持ちもあるが。


「ハハッ、欲張りだなぁ。じゃあドライブがてら全部行こう。プラン考えておくよ」


 きっと……。


『わぁー、楽しみ~』


 

 切ないデートに違いない。



お読み下さりありがとうございました。


次話「『エピローグデート』(1)」もよろしくお願いします!

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