優柔不断(4)
偶然にも再会を果たした僕と彼女。
ふたりで夕食をともにすることになった。
近くのお洒落なイタリアンレストランで、パスタのコースを食べることにした。ワインも頼んだけど、彼女は、グラス半分で顔を真っ赤にしている。やっぱり可愛い。
「ふふっ、このお店ね、高3の夏、親友クンと、彼女ちゃんと、あなたと私の4人で映画を見た後に、皆で食事をしたお店なの。楽しかったなぁー。ホラー映画を観てね、その話をああだこうだって。盛り上がったよね~。あ、高校生の時のことなんて、覚えてないよね」
「ああ、ごめん」
「いいのいいの。あなたのせいじゃないんだから。悪いのはあの事故、なんて。ふふ。その後、ショッピングや何やらであっちこっち連れ回して、男子はヘロヘロになってたよねー。あ、覚えてないか、ごめんごめん」
どうしたんだろう。いつもの彼女とは違う気がする。
「大丈夫? 飲み過ぎじゃないの?」
「グラス半分しか飲んでないよ。あ、私がお酒弱いのも覚えてないよね。ごめんごめん」
妙にはしゃいでつっかかってくる彼女に、少し違和感を感じた。
「どうしたの? 何かあった?」
「ううん、何もない」
「今日のキミ、ヘンだよ」
「ヘンじゃなーい」
「何か話があったんじゃないの? だから、ごはんに誘ったんでしょ」
「別に何も」
「いや、僕には解るよ。言いたいことがあるんなら、ちゃんと言ってくれないと解らないよ」
「ふっ、そんなこともあったわね」
「そんなこと?」
「いいのいいの、高校生の時の話」
笑いながらそう言う。
彼女は一体どういうつもりなんだろう。
僕の記憶が戻っていないのを知っていながら、わざわざ高校生の時の話ばかりを引き合いに出すなんて。
彼女らしくない。
何か話があるんじゃないのか?
本心ではすごく気になるし、彼女の気持ちを聞いてしまいたい。
でも、言いだせない自分の方が本心を覆い隠す。
まぁ、無理に聞かずに、彼女が話したいタイミングになるのを待とう。と自分に言い聞かせて。
そうして妙な緊張感と違和感を抱きながら、いつもとは違う彼女の様子を見守ることにした。
いや、今の僕にはこんな彼女を目の前にして、為す術がないと言ったほうが正しいだろうか。
そんな調子のまま食事は進み。
コースも終わり、最後のコーヒーを飲んでいると、急に真面目な顔で彼女が話し出した。
お読み下さりありがとうございました!
食事の間中、様子がおかしかった彼女がついになにか話し出すのか。
次話「優柔不断(5)」もよろしくお願いします!