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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第8章 優柔不断
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優柔不断(2)

 目覚まし時計の凄まじい音で飛び起きた僕は、いつものように身支度を整え階下に降り、家族との朝食を摂るべく食卓テーブルにつく。


 相変わらず母の手料理は格別で、そのおかげもあってか会話も弾む。


「それで、どうだ」


 父の問いかけに答える。


「べつに」


「そんなわけないでしょう?」


 母の問いかけに答える。


「なにも」


「それはおかしいよ」


 妹の言葉に返す言葉もない。


「おにいちゃん! しっかりしてよ!」


「しっかりしてるよ」


 少なくともお前よりはな。


「一体なに考えてるの?」


「なにも」


 そう、なにも考えてない。


 あの日以来。

 彼女がお見合いをしたと聞いたあの日以来……僕の時計は止まったままだ。

 ただなんとなく朝起きて会社に行って。

 まあ、仕事は一生懸命に力を尽くすが。

 会社が終わってただなんとなく家に帰って。

 たまには同期と飲みに行ったりして。


 たまにはヤツ・・と出かけたりする。


 ある意味、なんの変哲もない平穏な日々を堪能している。……なんてな。


「その気もないのに、ヘンに気を持たせるような態度は、かえって相手を傷つけることになるのよ」


 妹もこんなことを言うようになったのか。


「わかってるよ」


 解ってるよ、そんなことお前に言われなくてもな。


「お前はいつからそんな無責任なやつになったんだ」


 父親の落ち着いた声音は、ある意味胸に刺さる。


「そんなつもりはないよ」


 いっそのこと叱ってくれればいいのに。


「じゃあ、どんなつもりなんだ」


 どんなつもりって。

 どんなつもりもないから答えられるはずもなく。


「男としてちゃんとけじめをつけなきゃならんぞ」


 最近ヤツ・・と出かけることが多くなったのを心配してか、みんなしていらぬお節介を。

 そんな関係じゃないんだよな。


「わかってるよ」





 途切れた会話は少しその場の空気を重くしたが、またいつものように鞄に弁当箱を詰め込んで会社へ向かう。


 今日も平穏な1日でありますように。





 いつものようにいつものごとく会社に着くと、案の定ヤツ・・が駆け寄ってきた。


「ねえねえ、明日のお休み、デートしない?」


 最近は休みの前になると必ず繰り返されるこの会話。

 もう、うんざりと言いたいところだが、以前とは違い、この会話もそれほど悪くはないな、なんて。


「はあ? デートはしないよ」

 

 そしてお決まりの返事。

 コイツとはあくまでも友人としての付き合いだから、デートはしない。


「じゃあ、食事ならどう?」


「まぁ、食事くらいなら。でも、デー……」


「デートじゃない、でしょ。いいのいいの、それでもいいもーん。じゃ、明日ねー」


 ふぅ。

 いつものように嬉しそうに走り去って行くヤツ・・の背中を見送って思う。


 ……いい加減ヤツ・・とのこと、どうするのか考えないとな。

 いつまでもこんな中途半端な関係だと、辛いだろうし。

 

 今朝、父親にも言われたように、けじめを……。


 でも、今の僕には友達以上恋人未満としか……。



お読み下さりありがとうございました。


次話「優柔不断(3)」もよろしくお願いします!

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