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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第8章 優柔不断
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優柔不断(1)

 普通に、穏やかに。

 平穏な1日を過ごしたい。


 高校生のころからずっとそう思って生きてきたわけだが、最近たまに考える。


 『普通』ってなんだ?


 なにを基準に、なにを以て普通というのだろう。


 今までは特にそんなこと考えもしなかったが、ある時ふとそう思ってから気になりだした。



 以前ヤツ・・とちょっとした言い合いをした時のことだ。


 いつものように会社で腕を組んできたり、いちゃついたりしてくるのにうんざりして。

 しかも彼女とのことがあった後で、その原因になったヤツ・・につい腹立ち紛れに言ったときのこと。


『お前には常識ってものがないのか?』


『常識って?』


『人の気持ちも考えずに自分のことばっか。相手を思いやるってことを知らないのか』


『思いやってるよ』


『なら、ちょっとは遠慮しろ』


『遠慮って?』


『人の心にズカズカと土足で入ってくるなってこと』


 ったく、そんなことも考えられないのか。とその時は思った。


『私があなたの退院の日にしたことは、あなたと彼女がうまくいかなくなって、結果的にはあなたたちにはよくなかったことかもしれない。だけど、私はあの時言ってよかったと思ってる』


『はあ? お前ってホントに自己中だよな』


『あなたと彼女を傷つけることになったことは反省してる。でも、言ったことは後悔はしてない』


 キッパリと言い放ったヤツ・・の眼差しは真剣で、僕の方が一歩引いてしまうほどだった。


『どういうことだ』


『あの時言った通りよ。気づいていないなら教えてあげようと思っただけ』


『そんな、人の気持ちも考えずに余計なことを』


 そのせいで、彼女と会えなくなったわけだから。


『それがあなたたちにとっては非常識だって言うんでしょ? でも私から言わせれば現実逃避にしか思えなかった。それを教えてあげるのは普通のこと』


『お前にとっての普通ってなんだ? お前にとっての常識は僕たちには非常識だ』


『そう。人それぞれ価値観って違うのよ。自分のと違うからって、それを人に押しつけないで』


 その時ハッとしたんだ。

 人それぞれ顔つきや体型が違うように、ものの見方、考え方が違って当り前なんだ。

 自分の基準だけで物事を計るのはちょっと違うのかな、なんて。

 もっと大きな心の目で周りを見つめることが大切なのかなって。


 それからかな、ヤツ・・に対して以前のように毛嫌いしなくなっていったのは。


 嫌なところだけでなく、もっと良いところを見つけてみてもいいかな、と思いだしたのは。



お読み下さりありがとうございました。


次話「優柔不断(2)」もよろしくお願いします。

更新は明日朝の予定です。

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