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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第7章 それから
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それから(4)

 久しぶりに4人で、それはもう楽しい時間ときを過ごすことができた。

 割り勘の特上にぎりにドキドキしながら。

「やっぱ美味しいね」なんて言いながら。

 昨日までの僕の時間とは全く違うように感じる。


 同じ時間でも、誰とどう過ごすかによって、こんなにも変わるものなんだな。


 そう、夢のような時間。


 このままずっと時間が止まってしまえばいいのに、と思うほどに。

 

 でも現実は残酷なもんで。


 さあ、もうそろそろ帰ろうかと重い腰をあげたときだった。


 こんなこと聞くぐらいなら、昨日のままでもよかったのかも。

 こんな気持ちになるぐらいなら、今日彼女と再会しなければ。

 なんて思えるほどに。


「そ、そうなんだ。で、どうなの?」


 急な告白で、どう答えるべきか解らなかった。


「うん、昨日連絡がきて、話を進めたいって」


 急な展開で、どう答えていいか解らなかった。


「それでいいの?」


「まぁね、良さそうな人だったし」


 その笑顔が眩しすぎる。

 思わず目を覆って現実から背けたくなる。


「よかったね、応援するよ」


 僕はまた自分の心にウソをついた。

 そして彼女にも。


 せっかく友達だって言ってたのに、未練がましいと思われたくなくて。


 平静を装った。


 


 ……彼女がお見合いをした。


 そうだよな。彼女ちゃんとか見てると幸せそうだし、そんな気になるよな。

 ……なんてもの分かりのいいこと考えられるのか?


「じゃ、僕は帰るね。またみんなで集まろうな」


 僕はウソをついた。

 こんな状態でまたみんなで集まってどうする?


「おう、またな」


 引きつった笑顔とともに、僕は急ぎ足でその場を離れた。

 もう一時いっときもその場所にいたくなくて。

 もう一瞬も彼女の笑顔を見るのが苦しくて。

 あんなに好きだった彼女の笑顔さえ辛く感じるなんて。



 ……彼女がお見合いをした。


 考えてもいなかった。

 僕は動揺した。


 お見合いをしたのに、友達でいたいってどういうことだ?

 もう逢わない方がいいんじゃないのか?

 今更友達になってどうする?


 もう気持ちの整理はついていたはずなのに。彼女への想いを乗り越えたはずなのに。

 現実を突きつけられて、頭では解っているのに。……心が、僕の心が冷静さを失っている。


 友達でもいい。そこからゆっくりとそれ以上の関係になっていけるかと。

 淡い期待を抱いた自分が情けない。



 今となっては彼女のその言動は理解に苦しむ。

 僕は心の中をかき乱されて、この心をどう片付ければいいのか解らない。


 どこをどう歩いたか、気がつけば、駅前広場に来ていた。



「みーっけ」


 不意に腕を組まれ、我に返った。



お読み下さりありがとうございました。


次話「それから(5)」もよろしくお願いします!

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