それから(4)
久しぶりに4人で、それはもう楽しい時間を過ごすことができた。
割り勘の特上にぎりにドキドキしながら。
「やっぱ美味しいね」なんて言いながら。
昨日までの僕の時間とは全く違うように感じる。
同じ時間でも、誰とどう過ごすかによって、こんなにも変わるものなんだな。
そう、夢のような時間。
このままずっと時間が止まってしまえばいいのに、と思うほどに。
でも現実は残酷なもんで。
さあ、もうそろそろ帰ろうかと重い腰をあげたときだった。
こんなこと聞くぐらいなら、昨日のままでもよかったのかも。
こんな気持ちになるぐらいなら、今日彼女と再会しなければ。
なんて思えるほどに。
「そ、そうなんだ。で、どうなの?」
急な告白で、どう答えるべきか解らなかった。
「うん、昨日連絡がきて、話を進めたいって」
急な展開で、どう答えていいか解らなかった。
「それでいいの?」
「まぁね、良さそうな人だったし」
その笑顔が眩しすぎる。
思わず目を覆って現実から背けたくなる。
「よかったね、応援するよ」
僕はまた自分の心にウソをついた。
そして彼女にも。
せっかく友達だって言ってたのに、未練がましいと思われたくなくて。
平静を装った。
……彼女がお見合いをした。
そうだよな。彼女ちゃんとか見てると幸せそうだし、そんな気になるよな。
……なんてもの分かりのいいこと考えられるのか?
「じゃ、僕は帰るね。またみんなで集まろうな」
僕はウソをついた。
こんな状態でまたみんなで集まってどうする?
「おう、またな」
引きつった笑顔とともに、僕は急ぎ足でその場を離れた。
もう一時もその場所にいたくなくて。
もう一瞬も彼女の笑顔を見るのが苦しくて。
あんなに好きだった彼女の笑顔さえ辛く感じるなんて。
……彼女がお見合いをした。
考えてもいなかった。
僕は動揺した。
お見合いをしたのに、友達でいたいってどういうことだ?
もう逢わない方がいいんじゃないのか?
今更友達になってどうする?
もう気持ちの整理はついていたはずなのに。彼女への想いを乗り越えたはずなのに。
現実を突きつけられて、頭では解っているのに。……心が、僕の心が冷静さを失っている。
友達でもいい。そこからゆっくりとそれ以上の関係になっていけるかと。
淡い期待を抱いた自分が情けない。
今となっては彼女のその言動は理解に苦しむ。
僕は心の中をかき乱されて、この心をどう片付ければいいのか解らない。
どこをどう歩いたか、気がつけば、駅前広場に来ていた。
「みーっけ」
不意に腕を組まれ、我に返った。
お読み下さりありがとうございました。
次話「それから(5)」もよろしくお願いします!