それから(3)
間もなく、外出していた3人が帰ってきた。
なんやかんやと買い物をしてきたようで、とても楽しそうにしている。
子供ちゃんも上機嫌でケラケラ笑って、なんて可愛いんだろう。
親友と彼女ちゃんは普通に笑い合っている僕たち2人の様子を見て安心したのか、嬉しそうに寿司の出前を頼んだりして。
「おいおい、そんなに高いの頼んで大丈夫か?」
特上にぎりなんて。
「何言ってんだよ、今日は俺は嬉しいんだ。またみんなでこうやって集まることができて。ケチケチするな、ドーンと割り勘に決まってるだろ!」
「やっぱりな」
親友らしい。
こうやって4人で集まって笑い合うことができるなんて。
クリスマス・イヴに事故に遭って入院していた時以来だろうか。
公園から飛び出して来た子供を助けて……。
辛い入院生活のはずが、みんなのおかげで楽しく過ごせたな。
なんてつい想い出してしまう。
その後の厳しい日々を想えば少々切なくもなるが、みんなの楽しそうな笑顔を見ているだけで、今の僕には充分だった。
彼女とは空白の4ヶ月を過ごしたわけで。
耐えがたいほどの辛い、苦しい想いを必死でこころの奥に追いやってきたわけだが。
それももう過去の話と思えるほどに、この瞬間は僕のこころを軽くしてくれた。
そして彼女からの提案。
もう一度、友人として。
……友人として。
もう一度初めからやり直せるのだろうか。
初めはぎこちなくても、時間とともにだんだんとあの病院での時間を取り戻せるのだろうか。
いや、取り戻したい。
友達からでもなんでも、こうやってまた逢えることになったのだから、当然次のステップも……。
つい、そんな風に考えてしまう。
あれだけの想いをして、よくよく考えて下した決断。
そのために、日々馬車馬のように働いた。
働いて働いて働いて……忘れようとした。
それなのに。
僕の決心はいとも簡単に揺らぐほどのものだったのか。
彼女は一体どういう気持ちであんなことを言ったのか。
これからどういう風になっていきたいと思っているのか。
知りたい。
だがそれを聞いてしまうのは、やはり怖い気がする。
でも……。
久し振りに4人でワイワイやって、本当に楽しかった。もしかしたら、また4ヶ月前みたいになれるんじゃないかと、淡い期待を抱いてしまう程に。
……帰り際にあんなことを聞くまでは。
お読み下さりありがとうございました。
次話「それから(4)」もよろしくお願いします!