ちょっとした騒動(2)
案の定、雪が降り出した。
「やっぱ冷えるね~」なんて、のんきなことを言っているけど。
この3人は気づいているのだろうか。
まあ、その時はその時のことと割り切って、今は母の美味しい手料理に舌鼓を打ちながら、この『イケメンボーイ』くんの観察でもするとしようか。
って、僕はいつからそんな小姑みたいなことを考えるようになったんだ?
妹が可愛いなら、妹の喜ぶ顔が見たいはず。
それを彼氏のあら探しをするようなこと。
それで、もし気に入らないところが見つかったらどうする気だ?
兄貴面して反対でもしてみようか。
……まさか。
いくらなんでもそこまではするつもりはない。
だがしかし。
やっぱり妹の彼氏……と思うとあまり嬉しくない。っていうのが本音かな。
いつかはそんな日が来るとは思ってはいたものの、実際目の前に、まあまあいいヤツっぽい青年が鎮座しているのを見ていると、内心穏やかではない。
これが結婚の挨拶とかだったらアレだけど。
まあ、お付き合いの挨拶ということだから大目にみようか。
もしもとんでもないヤツだったら問答無用で追い返すんだけどな。
だがこの『イケメンボーイ』くんときたら、ちゃんと挨拶もできるし、礼儀正しい。
母親や僕を立ててものを言うし、見た目も真面目そうだ。清潔感もある。
冗談も通じるし話しやすい。
話題も豊富で……って、いいとこだらけじゃん。
まあ、今は猫をかぶっているのかもしれないが、それを差し引いても反対する理由が見当たらない。
そんなヤツいるか?
流石は我が妹よ。
ちゃんといいヤツを見つけたんだな。
まあ、僕には負けるかもしれないけど。
って、それぐらいは言わせてほしい。
昼食会も終わって、さあ食後のコーヒーでも、と母が席を立ったその時のことだった。
インターホンが家人を呼び出している。
「はいはい。全くもう、こんな大雪の日に一体誰かしら」
面倒くさそうにそう言う母。
昼食前に降り出した雪は、リビングから見える庭にも積もりだしていた。
「ただいま」
……!
聞き覚えのある声色が、室内に響く。
母と妹は顔を見合わせて、一瞬固まったように感じた。
その様子で全てを悟った『イケメンボーイ』くんは、緊張の面持ちで椅子に座り直す。
僕?
そんなこと予想してたよ。雪が降り出した時点でね。
ゴルフはね、いくら天候を選ばないっていっても、大雪の時はクローズになるんだよね。
え、知らなかったの?
やっぱり3人は気づいていなかったのか。
はあ、これはちょっとした騒動になりそう。
外の天気と同じで、荒れ模様だろうな。
そこへなにも知らずに父が……。
お読み下さりありがとうございました。
次話「ちょっとした騒動(3)」もよろしくお願いします!