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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第7章 それから
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ちょっとした騒動(1)

 休日、久し振りに目覚まし時計も気にせずに、ゆっくりと眠ることができた。

 日頃の仕事疲れからか熟睡できたように思う。

 ベッドから起き上がる前に、思いっきり背伸びをすると、眠気もとれて妙にすっきりと目覚めることができた。


 無造作に掛け布団を脱ぎ捨て、自室を出て階段を降りる。


 リビングに顔をだし、まずはお決まりの朝の挨拶だ。


「おはよう」


「あ、おはよう」


 母はなにか嬉しそうにご馳走をこしらえている。


「わあ、美味しそうだね。そんなにたくさん作って、お客さんでも来るの?」


「ふふふ。まあね。あなたも早く顔を洗って歯を磨いてきなさい」


 ああ、これもまた定番のお言葉。


 平日は身支度を整えてからリビングに行くわけだが、休日は時間的余裕もあるからまずはリビングに顔をだす。

 まあ、先に身支度を整えてから顔をだせばいいのだろうが、休日ぐらいはと油断するとこれだ。


 まったく、僕をいくつだと思っているんだ。

 そんな解りきったこと、毎回毎回言われなくとも。

 同じことを言われるのも、そろそろ卒業したい。


「はーい」


 とはいうものの、結局文句のひとつも言わずに洗面所に向かい、歯を磨く。

 親の言いなりになって『おりこうちゃん』にしている訳じゃないんだ。


 ただ面倒くさいだけ。


 ひと言「うるさいなぁ」なんてことを呟きでもしたらどうなる?

 それこそ、その何倍もの威力で言葉の嵐となって返ってくる。

 まあ、1度くらいはどうなるのか試してみたい気もしないでもないが。

 今はそんなことで無駄な労力は使いたくない。


 波風立てずに平穏な1日を過ごしたい。それが常日頃から僕が一番望んでいることだ。


 普通に、穏やかに。


 そう願っていても、思うようにいかないのが人生ってもんで。




* * *



 お昼前にひとりの来客があった。

 インターホンが鳴ると、うちの女性陣は待ってましたと言わんばかりに玄関口に。

 しばらく玄関先でワイワイとはしゃいでいたかと思うと、笑い声が聞こえてきたり。

 そしてなにやら楽しそうにリビングに入ってくる3人。

 母も妹も声のトーンがいつもより高くなっている気がする。


 母、妹、ん?


 誰だ?


 ふたりに続いて見たこともないイケメンボーイが。

 きっと大学生ぐらいだろうそのイケメン君は、僕から言わせればまだまだ『ボーイ』だ。


 「おじゃまします」


 邪魔するなら帰ってくれ、とも言えずに愛想笑いをする。


「いらっしゃい。えっと……」


「お兄ちゃん紹介するね」


 まあ、大体の想像はつくけど。

 妹の嬉しそうな、そしてちょっとはにかんだ可愛い笑顔を見ると、いくら鈍感なヤツでも解るよ。


「はじめまして。よろしくお願いします!」


「こちらこそよろしく」


 やっぱり。

 最近妙にオシャレに気を使うようになったと思っていたら、妹にこんなイケメンの彼氏がいたなんて。

 これは父が知ったら、大変な騒ぎになるだろうな。


 それでわざわざ今日を選んだってことだな。納得。



 今日は朝から雲行きが怪しい中、父は会社のゴルフコンペだとかなんとか言って、フルセット入りのゴルフバッグを持って、迎えの車にいそいそと乗り込んで行ったそうだ。

 いくらゴルフは時期を選ばないといっても、なにもこんな寒い時期の、しかもこんな天候の日に行かなくても……と思うのは僕ぐらいだろうか。



お読み下さりありがとうございました。


次話「ちょっとした騒動(2)」もよろしくお願いします!

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