一目惚れ(1)
夕方になり、買い出しに行っていた3人が帰ってきた。
急に賑やかになった病室。楽しそうにいろとりどりのモールやなんかを使って、華やかなクリスマスらしい飾り付けをしている。壁やドアに色んなものを貼り付けたりして、まるで子供みたいだ。
きっと僕を元気づけようとしてくれているんだな。
少しすると看護師さんが入ってきて、僕の体温や脈拍、血圧などを測定している。
「楽しそうね。今日はクリスマスだものね。でも、患者さんが疲れるようなことはしないようにね」
「はーい」
大きな声で満面の笑みとともに返事をする。
本当にみんな子供みたいだ。
親友と、彼女ちゃんと、もう1人……。とっても可愛いもう1人。
誰なんだろう。僕好みの清楚で、とっても可愛い娘。サラサラロングヘアで、くりくりっとした澄んだ瞳。笑顔がとっても可愛い人。
すごく気になる。
これを一目惚れというのだろうか。
前にどこかで会ったような気もするが、会ってない気もする。
そんなことを考えていると飾り付けが終わり、みんなは満足げに眺めている。
さあ、いよいよパーティーが始まる。
……といっても流石に病院なのでケーキを食べて、飲み物を飲んで、トランプをしたりベラベラ喋って盛り上がってみたり……というかわいいものだけど。
そうしてみんなで楽しく会話をしていたけれど、とっても可愛いもう1人のことが気になって。
何気なく言った僕の言葉で、場の雰囲気が一変した。
そう、正しく凍りついたのだ。
「今日は見舞いに来てくれて、ありがとう。親友たちに付き合わされて、キミも大変だね。
僕は嬉しいけど、折角のクリスマスだし、彼氏に叱られるんじゃない?
えっと、名前は……まだ聞いてなかったね」
「え……って、お前何言ってんだよ」
「何って、こんな可愛い人が、クリスマスに僕なんかのところに出入りしてたら、彼氏がヤキモチ焼くんじゃないかなって」
「はあ? 何つまんねぇ冗談言ってんだよ。ちっとも笑えねぇよ」
「冗談言ってる顔に見えるか?」
僕は真剣な面持ちで、親友を見据えた。
しばらくの沈黙のあと、〈可愛いもう1人〉が口を開いた。
「本当に私のこと解らないの? 名前も覚えてないの?」
「うん、前にどこかで会ったような気もするけど、会ってないような気もするし……。基本、キミみたいに可愛い人に出逢ってたら、僕は忘れることはないと思うんだけどなぁ」
「他のみんなのことはどうなの?」
「みんなのことは覚えてる。でもキミのことは、はじめましてとしか……」
お読み下さりありがとうございました。
次話「一目惚れ(2)」もよろしくお願いします!