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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第4章 一目惚れ
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気がつけば(1)

 気がつけば、またいつもと同じ白い夢の中――

 いや、違う。


 確かに全てが純白だが、何かフワフワとしている感じで、空はやはり白だが、どこまでも高く、壁はない。

 床は、純白のサテン生地のように光沢があり、どこまでも続いている。


『なんて美しいんだろう』


 ようく辺りを見渡してみると、何人もの人が微笑みあって、静かに座っている。そしてみんな純白サテンの、ローブらしきものを身に着けている。もちろん僕も。

 僕は足元にある純白サテンの階段を、中程までゆっくりと降り、そっと階段に腰かけた。


 なぜか、スーッと安心し、心が落ち着いてゆく。それに妙に懐かしいような、なんとも言えない優しい気持ちになってくる。


 此処にこうしていると、僕がどうして此処に来たのかなんて、気にならなかった。

 もうそんなことはどうでもよかった。




 しばらく時が過ぎ、ふと見下ろせば、階段の横はフワフワとした、まるで大きな綿菓子のような、真っ白な雲で覆われている。

 ようく見るとその雲の切れ目から、下界が広がっているではないか。


 僕は時間を忘れ、人々の生活をただずっと見守っていた。


 どのくらいの時間が経ったのだろう。


 いや、もはや時間という概念すら、ここにはない。


 ある時、僕と同じ純白サテンの、ローブのような衣をまとったひとりが近寄ってきて、肘にかけた大きな果物かごのようなものを、僕に見せた。


 覗くと、そこにはやはり純白のサテンのような衣を掛けられた、生まれたての赤ちゃんが、スヤスヤと眠っている。幸せそうに。なんて可愛いのだろう。

 僕はその無垢な姿に釘付けになった。


 すると、どこからともなく低く響く、厳かな男性の声が聞こえてきた。


『君は今からその赤ん坊となり、下界の新たな両親の元に、誕生するのだ』


『え、えーっ』


 いやいやいや。

 いくらなんでも、それは……。


 その瞬間、僕は……目を覚ました。


 ああ、夢か。変わった夢だったな。


 ん? 何か周りが騒がしいぞ。

 



『此処は……何処だ?』


 みんな集まっている。父、母、妹、親友、彼女ちゃん、そしてもう1人。とっても可愛いもう1人。

 あ、病院か。白い天井と白い壁に囲まれた部屋の中。何か前にも見たことがある場面のような気もするが、今はなにも思い出せない。


 少し広い個室にあるベッドの上で、僕は目を覚ました。体中あちこち痛くて、すぐには動けないが、ゆっくりとなら動かせた。みんなは、僕が目を覚ましたと、大騒ぎしている。誰かが先生を呼びに行ったようだ。


 僕は一体何があったのか、思い出してみた。頭の中が混乱している。

 ゆっくりと思いだしてみる。




 あ、そうだ。僕は待ち合わせをしていた。とても大切なことのために。

 その大切なことのための待ち合わせ場所に向かう途中、公園からボールを追いかけて、車の前に飛び出した男の子を助けようと……。


 ああ、それで僕はここにいるんだな。



気がつけば、こんなことに……。


お読み下さりありがとうございました。


次話「気がつけば(2)」もよろしくお願いします!

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