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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第3章 大切な人
28/110

今日、彼女にプロポーズをする

 ……明日、プロポーズするつもりだ。

 

 明日はクリスマス・イヴ。


 あの秋の日に決心してから、ずっとこの日を心待ちにしていた。

 いろいろとプランを考えては練り直し、の繰り返しだったが。


 僕が彼女を想う気持ちはだんだんと大きくなっていくばかりだ。





 彼女とは山あり谷ありと色々あったが、今でもあの頃と、付き合いだした頃と気持ちは変わらない。

 いや、以前にも増して、彼女を想う心が溢れている。


 彼女はいつも冷静で、しっかり者だ。そのくせ少々ドジなところもあり、何故か放っておけない。そのギャップが何とも可愛い。

 そして何より、あの澄んだ瞳の、くったくのない笑顔で見つめられると、


『ああ、この人と一生一緒にいられたらなぁ』


 漠然とした思いが、今では必然になっている。


 これほどまでに強く愛した女性ひとは、今までも、そしてこれからも、彼女だけだ。

 エンゲージリングも、もう用意してある。デートの度に申し込もうと思うけれど、緊張のあまり、いつも言えずにいる。


『明日こそ、彼女にプロポーズをしよう』


 女性は、ロマンティックなシチュエーションに憧れるというけれど、僕から見たそれと、彼女のそれとでは、少し違うのでは?

 でも、一生懸命考えて僕の想いを届けたら、きっと伝わるんじゃないかな。


 あれこれ考えるより、今夜はもう眠るとしよう。

 明日が少し怖くもあり、待ち遠しくも思えた。



『僕はずっと、彼女に言いたい言葉があるんだ』



 そうこころに浮かべた言葉を想いながら、うとうとと眠りの森へと吸い込まれていった。





 しばらくすると、遠くで誰かの声がする。


「……」 


「…………」


 鈴を転がしたような澄んだ声が、僕の名前を呼んでいる。優しい、そしてどこか懐かしいその声に、夢の中で目を覚ました。


 そっと目を開けると……。


『此処は……』


 ――全てが真っ白な世界――



 あの日以来訪れることはなかった場所。


 そう、『女神の居所きょしょ』だ。


〈女神のようなその差し出した手〉を、また僕は追いかけている。追いかけて、追いかけて、追いかけてやっと追いついた。

 やっと捉まえて、透き通るように白く華奢きゃしゃな、その壊れそうな手を手繰たぐり寄せ、顔を覆っていたベールを上げた。





 目覚まし時計の凄まじい音が響く前に目覚めた僕は、



『今日、彼女にプロポーズをする』



お読み下さりありがとうございました。


次話より『第4章 一目惚れ』に入ります。

次話「クリスマス・イヴ(1)」もよろしくお願いします!

引き続き楽しんで下さると嬉しいです。

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