告白記念日(3)
仕方がないので、ヤツを彼女に紹介することにした。
「こちらが彼女さん? ふーん、まあまあね」
おいおい、なんだよそれ。
「は、はじめまして。彼がいつもお世話になってます」
いきなり失礼なことを言われても流石は僕の彼女だ。
「いえいえ、お世話になってるのはこちらの方で、彼にはいつも仲良くしてもらってまーす」
「そうですか」
「最近は社内でもウワサになちゃうほどなのよ」
「えっ」
「っんな訳ないだろ! お前が勝手にくっついてきてるだけじゃないか」
「あ、そうそう、今度社内のプレゼンを、彼と2人で担当することになったの。だから毎日1日中ずーっと2人きりで過ごすのよ」
そう言いながら僕と彼女の間に割り込んできて、また腕を組もうとする。
それを振り払いながら、
「仕事だっつうの。それに、くじ引きで仕方なくペアになっただけだから。会議室に集まって皆でやるのに、2人きりの訳ないだろ。何考えてんだ!」
と言っても全く効き目なし。
「またまた照れちゃってぇ。彼女の前だからって、恥ずかしがらなくてもいいのにぃ」
もう、本当にやめてほしい。
「うるさい! もう、お前は帰れ」
「はいはい、また明日、よろしくねぇ」
はぁー、やっと帰ってくれた。なにしに来たんだか。
彼女のほっぺがちょっとふくれてる。
「ゴメン」
「随分仲が良さそうね」
ああ、こんなことを言わせるなんて、彼女に申し訳ない。
「まさか! アイツが一方的に言ってるだけで、僕は迷惑してるんだ。ここにだって勝手についてきて」
「でも、ここに来たとき、腕組んでた」
「だからアイツが一方的に……」
「でも! 私と話す時と、態度が全然違う。すごく仲が良さそうに見えた」
僕の言葉を遮るように彼女が言う。
これは、アレだな。ヤキモチってやつだな。
「仲が良いわけないよ、ただの同期だ。アイツのことなんて、何とも思ってないんだから、男友達と喋ってるのと同じだよ。
でもキミは違う。僕の大切な人だから、大切な気持ちでいつも話してる。態度が違うのは当り前だ」
「でも……」
僕は思わず彼女を抱きしめた。
「僕が好きなのは、キミだけだ。今までも、これからも。解ったか?」
「解った」
彼女の言葉にホッとしたと同時に、ひとつ解ったことがある。
「よし。じゃ、ご飯食べに行こ。もうペコペコだ」
「私も! ……ごめんね」
「何が? ヤキモチ焼いたこと?」
「ヤキモチなんかじゃ」
やっぱアレだ。
「いいよいいよ。キミが僕のこと大好きだってことが、よーく解ったから」
「もう!」
その後、僕たちは予約していたフレンチレストランで、ちょっぴり豪華なディナーを堪能した。
何故って?
それは……今日は僕たちには大切な記念日だから。
8月も終わりのあの日以来、毎年ちょっとしたイベントをしている。
今年で6回目。色々あったけど、来年も、再来年もずっと一緒に過ごしていきたい。
そしていつか……。
お読み下さりありがとうございました。
次話「」もよろしくお願いします!
(題名を載せてしまうとネタバレになってしまう……)