告白記念日(1)
目覚まし時計の凄まじい音で飛び起きた僕は、身支度を整え、会社に向かう。
今日こそ平穏な1日になりますように。
いつものようにいつもの如く駅まで歩き、満員電車にゆらり揺られて。
やっとのことで会社に着くと……やっぱり満面の笑みを浮かべたヤツが来た。
「おはよう。今日もよろしくねぇ」
「はいはい、おはよう」
何を言われても特に言い返すこともせず、適当に話を合わせてその場をやり過ごす。
毎日毎日懲りもせず言い続けたヤツに根負けしている。
もう最近は、半分ヤケクソだ。
それでも時間は過ぎてゆくわけで。
朝礼後、部長から発表があった。
今年の新入社員で、男女ふたり一組になって、部内プレゼンをするように。その出来映えによって、10月からの正式な配属先が決まる、とのことだ。
早速、そのペアを決めるべく、くじ引きが行われた。
ヤツとだけは一緒になりませんように。他は誰でも、文句はいいません。
目をつぶり心の中で願をかける。
「これだ!」
勢いよく、くじを引いた。
「何番だ?」
「2番です」
「2番の女子、2番の女子は誰だ?」
上司の問いかけに、ドキドキしながら周りを見渡した。
「はぁーい、私でぇーす」
この声、この口調。
ま、まさか……。
声の主の方へ目をやる。
……やっぱり。
「ほ、本当に2番か? ちょっと見せてみろ」
そう言って、手に持っていた紙を見ると……た、確かに2番と書いてある。
うそだー、誰か嘘だと言ってくれ、若しくは夢だと……ううっ。
「ねぇ、ちゃんと2番って書いてあるでしょう?」
「た、確かに」
同じ部に仮配属された新入社員は、男女10人ずつの計20人だ。女子は10人もいるのに、なんで選りに選ってヤツなんだ!
ただの偶然か、はたまた誰かの陰謀か、それとも僕の日頃の行いが悪いのか、ただついていないだけなのか……。
「はあぁー」
特大のため息をついた僕に、同期がニヤニヤ笑いながら近づいてきた。
「お前ついてるなぁ、がんばれよ」
「嫌味か! で、お前はどうだったんだ?」
「俺は5番。ミス新入社員ちゃんだ」
「ほぉー」
「俺、緊張して、仕事手につかないかも。ムフフ」
「ムフフって、お前彼女いるだろ。ヘンな気起こすなよ」
「それとこれとは別」
「浮気心だすなよ!」
「はいはい。お前は堅物だなぁ」
「普通だよ。さ、仕事、仕事」
そんなこんなで、ちょっとバタバタしながらも、今日も無事に仕事を終えた。
「お先に失礼します」
「お疲れ様でした」
今日は、彼女とディナーの約束。逸る気持ちを押さえつつ、会社を後にする。
だが外に出ると、そこにはひとつの人影が待ち構えていた。
人影って……。
お読み下さりありがとうございました。
次話「告白記念日(2)」もよろしくお願いします!