表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第3章 大切な人
22/110

5年後の日常(4)

「んー」

 

 両手を上げて、思いっきり伸びをした。午前中の仕事が終わり、待ちに待った昼食だ。


「いっただきまーす」


 机の上に弁当を広げ、元気良く母特製の卵焼きを頬ばる。やっぱり母の作る卵焼きは格別だ。

 周りの席の同期たちと楽しく喋りながら食べていると、例のごとくヤツ・・がやって来た。


「わあー、おいしそうな卵焼き。1つちょうだい」


「だめー」


「私も今日はお弁当持ってきたの。隣で一緒に食べてもいーい?」


「ここは男子専用。仕事の話とかしてるから、お前も女子と食べて来いよ」


「だってぇ、他の女子はみんな真面目すぎて、気が合わなーい」


 と、フワフワパーマの毛先を、人差し指でクルクルしている。


「お前はもっと真面目になれ!」


 僕たちのやり取りに、同期は皆苦笑いをしている。その時、僕の仲良くしている同期が言った。


「お前、いい加減諦めろよ。コイツには6年も付き合ってる、メチャクチャ可愛い彼女がいるんだぞ」


「知ってるもーん」


「なら諦めろ」


「でも6年て長いよねぇ。長すぎた春なんてね。ふふふ」


「お前の入り込む隙間なんか、これっぽっちもないんだからな」


「彼女なんかより、私の方がぜーったい、いいと思うけどなぁ」


 そう言いながら少しほっぺを膨らませて、可愛いアピールとともに背を向けるヤツ・・



 彼女のこと、知りもしないくせに。



 ヤツ・・に追いかけ回される日々が、あとどのくらい続くのかと思うと、少し憂鬱になった。


 あー、早くヤツ・・が他の誰かと、付き合ってくれますように!

 心からそう願う。この職場での煩わしいやり取りから1日も早く解放されたい。



 ヤツ・・が去って行った後、仲の良い同期が同情の眼差しで、僕の肩にポンと手を置いて言う。


「お前も大変だな。帰り、飲みに行くか? 愚痴聞いてやるぞ」


「おう。愚痴よりもっと楽しい話をしようぜ。……お前、最近彼女ができたらしいな」


 僕はヒヒヒと笑いながら、同期の脇腹を肘でつついた。


「お、俺の話はいいからさー、お前の彼女の話を聞かせてくれよ」


 そんなに照れなくても。ちゃんと聞いてやるよ。


「そりゃあ、一晩じゃ語れないなぁ」





 その日は、同期と夜遅くまで語り合った。仕事のこと、お互いの彼女のこと、将来の夢……。

 話しても、話しても、話は尽きなかった。


「今日は、ありがとな」


「おう、また飲みに行こうぜ。一晩じゃ語れない続き、聞いてやるからさ」



 そうして、僕の平穏じゃなくなった1日が、終わろうとしている。

 疲れた体を、ベッドに放り込んだ。



お読み下さりありがとうございます。


次話「告白記念日(1)」もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ