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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第3章 大切な人
19/110

5年後の日常(1)

前話『遊園地 (今までも、これからも……)ー2』高校3年生の、仲直り遊園地デートから、5年後のお話です。

 目覚まし時計の凄まじい音で飛び起きた僕は、相変わらず、いつものように身支度を整え階下に降り、父、母、妹と4人揃って朝食を摂る。我が家では特別なことがない限り、“朝・夕は全員揃って食事をする”、という暗黙のルールがあるのだ。

 父と妹はもうテーブルについて配膳を待ちながら、慌ただしい朝のひとときを思い思いに過ごしていた。


 「おはよう」 


 『おはよう』


 全員一瞬こちらを見て、また思い思いの時間に戻る。


 僕もテーブルにつき、並べられた朝食に目をやる。

 クロックムッシュにベーコンエッグ。サラダにコーンポタージュスープ。それからフルーツにヨーグルト。

 今日は洋食か。

 母が席についたところで食事が始まる。





「あなたたち、いつ結婚するの?」


 親友と彼女ちゃんが結婚してから、やたらと聞いてくるようになった母。


「そのうちにね」


 毎回同じ質問に毎回同じ答え。


「あんまり女性を、待たせるものじゃないわよ」


 別に待たせているわけじゃない。


「僕たちには、僕たちのタイミングっていうものがあるから」


 タイミングの問題なんだ。


「長すぎた春なんてことに、ならないようにね」


「解ってるよ」


 そんなこと解ってるよ。解ってるさ。でも今じゃないんだよな。




 以前ほど頑固ではなくなったが、依然厳しい父。いつも明るく向日葵のような母。その母がいるからこその、僕たちは仲の良い家族だと言っても過言ではない。


 妹はというと……相変わらず甘え上手で、いつの間にかみんなを自分のペースに巻き込んでいる。

 僕の彼女とも結構仲良くやっていて、休日なんかは僕そっちのけで、2人でショッピングに出かけたりしている。まるで本当の姉妹のようだ。彼女には、僕に言えないような恋の相談なんかもしているのだろうか。


 お年頃のせいか、最近ミョーに色気づいてきたみたいで、化粧なんぞしだして。

 兄としては、内心穏やかではない。

 いくら大学生だとはいっても、もし彼氏なんかを家に連れてきた暁にゃあ、父はかなり荒れるだろうなぁ。もちろん僕も。


 いつまでも子供の頃のイメージが拭えないが、僕が大人になった分、妹も大人になったということで。それでもいつまでも可愛いままでいて欲しいと願ってしまう。


 それに、僕がオトナになったということは、両親もそれなりに歳を重ねたということで。

 僕も落ち着いて早く安心させたい気持ちもあるが、もう少し先のことになるだろう。



 僕も相変わらず、平穏な日々を過ごしている。平穏な日常確保のために、大学受験、大学生活、就職活動……と奮闘して、ほぼ平穏、たまに嵐を乗り越え、この春から、晴れて社会人になった。学生気分も抜けて、日々仕事に励んでいる。


 あれから見なくなった『女神の居所きょしょ』の夢を思い出して、少し続きが気になることもあるが、夢のことなので、自分ではどうにもできない。


 3人を見ていて、『ああ、この家族の元に生まれてきてよかったなぁ』とつくづく思う。僕もこんな家庭を将来築けたらなぁと。



お読み下さりありがとうございました。


今話より『第3章 大切な人』に入りました。


次話「5年後の日常(2)」もよろしくお願いします。

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