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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第2章 言わなかった言葉
17/110

遊園地 (今までも、これからも……)ー1

今話は、前話での1年前の出来事を踏まえて、今日彼女との待ち合わせ場所に向かうところから始まります。

 僕が彼女に告白して1年余り、僕たちの“恋”は、ゆっくりと進んでいった。ゆっくりと、僕たちなりのスピードで、ゆっくりと……。


 そして今日――

 




 予定の時間より少し早めに家を出て、公園や見慣れた街並みに目をやりながら、ゆっくりと彼女との待ち合わせ場所に向かうことにした。

 いろんな想いを胸に、そして噛みしめながら歩く。


 僕は待ち合わせの30分前に、駅前広場に着いた。

 去年のあの日と同じ時間、同じ場所で彼女を待っている。

 そして想い出していた。


 1年前のあのワクワクとした、ドキドキとした胸の高鳴り。


 1年前には想像すらできなかった昨日。


  僕の隣にはいつも彼女がいる。そして、僕の大好きな笑顔を見せてくれる。

 ――それだけで、幸せだった。


 だけど、今日はどんな顔をして彼女に会おう。

 余計なことを色々考えると、気が滅入ってくる。



 待ち合わせの10分前に彼女がやって来た。僕の姿を見つけると、いつものようにニコッとして、右手を大きく振り、それからロングヘアをなびかせながら走って来る。


「おはよう。走らなくてもまだ10分前だよ」


「おはよう。待たせてゴメンね」


「僕も今着いたところだから」


「そうなの? 今日は私が先に来て『遅い!』って言ってやろうと思ってたのに、残念」


 何事もなかったかのように、彼女はいつもと同じ笑顔を見せてくれる。我慢させているのかと思うと、胸が痛む。


『去年と同じことがしたい』と言うので、彼女の言う通りにした。

 そして残暑厳しい中食べたかき氷は、また格別で。案の定、頭がキーンと痛くなり、また2人で笑い転げた。去年と同じ。


 ジェットコースターに乗り、観覧車にも乗った。去年と同じように。


 観覧車での2人だけの空間。

 頂上から見える、夕陽を浴びてキラキラと輝く海。


「うわぁ、きれい!」


 彼女は瞳を輝かせ、またうっとりと見入っている。


 去年と同じだ。今なら素直になれそうな気がした。


 それから観覧車を降りるまで、2人ともじっと夕陽を眺めていた。

 そして地上に降りると、走って浜辺に向かった。


 全て去年と同じように。



 砂浜に着くと、彼女は小走りで波打ち際まで行き、海に溶ける夕陽を見つめている。


 僕は少しの間、夕陽に映る後ろ姿を見つめていた。

 愛おしい、なのに哀しませてしまった彼女の後ろ姿を。


 それからゆっくりと歩いて、背中からそっと抱きしめた。大好きな彼女を。

 そしてそのまま彼女の耳元でもう一度伝えた。


「キミに、言いたいことがあります」


 彼女の体が強張った。


「ずっと、ずっと……心からキミが好きです。今までも、これからもずっと変わらない」


 僕の腕に温かいしずくが落ちてくるのを感じた。


「私も……心からあなたが好きです。今までも、これからも。たとえ何があったとしても」


 涙のせいか少し震えた彼女の声は、それでもハッキリと僕のこころの奥に届いた。


 これほどまでに温かい言葉があるだろうか。

 これほどまでに僕のこころを占領する人はいるだろうか。


 僕はそのまま彼女のほっぺにキスをした。そしてその横顔に、そっと囁いた。


「待たせて、ゴメン」


「遅いよ」


 そう言って、彼女は微笑んだ。


 そのまま2人で、夕陽が水平線の彼方に消えてゆくのを見送った。名残を惜しみながら。


 いつまでも、いつまでも。




 けれど、その帰り道、彼女から思いがけないことを聞いたのだ。



彼女はなにを語ったのでしょう。


お読み下さりありがとうございました。


次話「遊園地 (今までも、これからも……)ー2」もよろしくお願いします!

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