遊園地 (キミの笑顔ー2)
その日はとても暑い日だったので、ソフトクリームを買うことにした。
やはり冷たいものは大人気で、行列ができている。僕たちもその行列の最後尾に並び、順番を待つ。
やっとのことで手に入れた白くて甘い誘惑に、わあ、美味しそうと一口食べてみようとしたとき、すぐ前を歩いていた男の子が転んだのが目に入った。折角買ったソフトクリームを落としてしまい大泣きをしている。
その男の子を見かねた彼女が近くまで走り寄り、今買ったばかりのソフトクリームを差し出した。
『はい、これお姉さんからのプレゼント。もう泣かないでね』
とニッコリ笑う。
『ありがとう』
さっき泣いていたカラスがもう笑ってる。男の子は嬉しそうに、今度は転ばないように気をつけながら、歩いて行く。その後ろ姿を2人して見守った。
『可哀相に』と思いながらも、見て見ぬふりをして通り過ぎてゆく大人が多い中、一歩を踏み出すのには、勇気がいる。それをサラッと自然にやってのける彼女の優しさに、そして行動力に感心した。
『もう1回並ぼうか』
僕の問いかけに、
『ソフトクリームはもう買ったから、次はかき氷がいいな』
そう言って笑う彼女はまるで天使のようだ。
それからしばらく並んでかき氷を買う。いちご味のかき氷を手に日陰のベンチに腰掛けることに。
すごく冷たくて、一口食べるごとに頭の天辺がキーンと痛くなる。それが可笑しくて、可笑しくて、2人でずっと笑い転げていたっけ。
何でもないことでも、彼女といるだけでこんなに楽しく思えるんだ。
彼女はどう思っているんだろう。僕といて、楽しいと思ってくれているのだろうか。
……そんなことを考えながらかき氷を食べ続けた。
少しして、彼女がジェットコースターに乗りたいと言いだした。僕は反対したけど。反対したけど彼女の押しに負けて、結局乗ることになった。
ゆっくりと頂上に上っていく間、僕は余裕を見せて喋ったりしていたが、頂上に着くと、2人とも無言になっている。下る瞬間、“ふわん”となる。胸の奥の方が、一瞬無重力になるような、あの“ふわん”となる感覚が、どうも苦手なのだ。
いざ下ると、あとはどうにでもなれ、と開き直った。
彼女はというと、キャーキャー言いながらも、両手を挙げたりして、ジェットコースターを思いっ切り堪能している。女子はこういうの好きだよな。案外男の方がだらしないのかも。
ジェットコースターから降りた後、ヘロヘロになっている僕を見て、また彼女が笑い転げている。僕もつられて、2人で大笑いした。
『こんなに大笑いしたの、久しぶりだよ』
『私も。息継ぎができなくて、危ないところだった』
そう言って、また笑ってる。この笑顔を、独り占めしたいと思った。
『次は観覧車に乗ろう』
まだ笑っている彼女を促して、観覧車のところまで行く。
観覧車って、なんかドキドキしませんか?
2人きりの空間。なにをすればいいのやら。
お読み下さりありがとうございました。
次話「遊園地 (君の笑顔ー3)」もよろしくお願いします!