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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
第2章 言わなかった言葉
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言わなかった言葉(1)

 目覚まし時計の凄まじい音で飛び起きた僕は、いつものように身支度を整える。

 9月も半ばを過ぎているというのに残暑厳しい今日も、平穏な1日を過ごすべく学校へと向かう。


 途中みんなと合流し、ワイワイと喋りながら学校まで歩く数十分間は、僕たちには大切な時間だ。

 ああでもない、こうでもないと下らない話が多いけれども、とても楽しい時間である。


 今日もそうやっていつものように学校に着いたのだが、少し気になることが。

 心なしか、彼女があまり僕と目を合わさないようにしている気がする。


 気のせいか?

 単なる思い過ごしならいいのだけど。


 彼女とは依然仲良くやってる。だけど最近なんだか様子がおかしい。僕に思い当たる節はないけど、気になって放課後、彼女に聞くことにした。


「どうしたの?」


「何が?」


「最近なんかヘンだよ」


「そんなことないよ」


「僕が気づかないと思った? 何か気に障ることでも言ったんなら、謝るよ」


「言ってない」


 そっけなく返ってきた彼女の言葉につい言ってしまう。


「でも、機嫌悪そうだけど?」


「機嫌なんか悪くない」


 少し強めの口調にまた言ってしまう。


「じゃあ、どうしてそんなにツンケンしてるんだよ」


「ツンケンなんかしてない!」


「してるよ!」

 

 つい言ってしまった言葉に、彼女はぎゅっと下唇を噛み締めた。

 ……言い過ぎた。言い争うつもりなんか全くなかったのに。


「ごめん」


「何で謝るの?」


「解らないけど、もし僕が言った言葉で君を傷つけたんなら、僕が悪い。謝るよ」


「何も言ってない」


「え?」


 じゃあどうして?


「何も言ってないよ」


「じゃあどうして! ……ちゃんと話してくれないと、ちゃんと言葉にして言ってくれないと、解んないよ」


 言いたいことがあるなら、ちゃんと言葉に出して言ってほしい。

 でないと解らないよ。


「そう、ちゃんと言葉に出さないと解んないのよ。あなたは何も言ってないわ。何も。人の気持ちなんて黙ってちゃ解んないのよ!」


 そう言って彼女は目にいっぱい涙を溜めて、走り去って行った。


 僕は途方に暮れた。

 彼女が何を言いたいのか、皆目見当もつかない。


 最近の僕たちの言動を思い起こしても、彼女がどうしてあんなにに涙を浮かべていたのか、全く解らない。


 特にケンカをしたわけでもなく、意見が食い違ったわけでもない。

 いつもと変わらず、それこそ平穏に過ごしていたはずだが。


 考えても、考えても余計に解らなくなって、僕たちの様子を側で見ていた親友と彼女ちゃんに助けを求めることにした。



お読み下さりありがとうございました。


次話「言わなかった言葉(2)」もよろしくお願いします!

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