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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
最終章 『今までも、これからも。』
109/110

想い出の海、夕陽。そして……

 この海での想い出は今でも輝いている。

 この景色にこの海風にこの潮の香りに、あの頃を想い出す。

 僕と彼女には忘れられない、青春の宝物でいっぱいの場所。

 7年前の今日と6年前の今日。

 それから毎年訪れる『今日』の日を、『記念日として』楽しんだ。


 今日は僕たちには大切な記念日だから。

 8月も終わりのあの日以来、毎年ちょっとしたイベントをしていた。

 勿論、去年も。


 色々あったけど、来年も、再来年もずっと一緒に過ごしていきたい。

 そしていつか……。


 そう思った去年の今日。



 今年の今日は彼女が結婚式をあげようとしていた。

 僕達の記念日。


 今までの温かい想い出が、辛い日に変わろうとしていた矢先。

 彼女は結婚を取り止めた。

 辛い日に変わることはなくなった今、今日の日の想い出はいつまでも美しいまま、こころに残り続ける。



 眩しく光る波を見つめ、水平線の彼方へ想いを馳せる。


 どこまでも続く空と海。

 空の蒼さが海の碧さと繋がるところは、お互いを大切に想い合い、ちょっぴり照れながら頬を染めているようにどこまでもあかい。



 僕は今まで一体なにをしていたんだろう。

 雄大な景色に、自分がちっぽけに感じた。 


 小さな出来事で一喜一憂して、些細な出来事にまるで人生の終わりのような絶望感にさいなまれたりして、ときにはほんの少しの出来事に大喜びしてみたり。

 でも、それが人間なのかもしれない。


 悩まないヤツなんていないんじゃないかな。

 他人ひとから見ればほんの米粒、ごま粒ほどのことでも、当の本人には宇宙を揺るがすほどの大きな出来事に感じることだってあるんだ。


 だって、それぞれの人生ではそのひとが主役なんだから。


 そして今までがあるから、今があるんだ。これからがあるんだ。



 そんなことを考えながら眺める水平線は、まだ眩しくて。

 今も碧海へきかいはキラキラと輝いている。

 あの頃も波打ち際で、海に溶ける夕陽を、ずっと見つめていたな。


「やっぱりここから見る夕陽は、きれいだな」


 懐かしく優しい想いを想い出し、温かい気持ちで自然と言葉がこぼれていた。


「そうね」


 穏やかで澄んだ声が僕の耳に届いた。



お読み下さりありがとうございました。


いよいよ次話で完結です。

タイトルは、ネタバレになってしまうので載せませんが、

明日、完結します。


ラストまでよろしくお願いします!

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