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『今までも、これからも。』  作者: 藤乃 澄乃
最終章 『今までも、これからも。』
105/110

手紙   

 親友との電話を切ると机に向かい、僕は大きく深呼吸をする。


 そしてペンを手に取り、彼女に手紙を書くことにした。




――――――* * *――――――



 その後、元気にしているか?

 何からどう書いていいのか。急な手紙でびっくりさせたと思う。

 僕から書く、初めての手紙だね。上手く伝えられるか解らないけど、今の正直な気持ちを書こうと思う。


 僕の方は……あれから色々考えたよ。最後のあの『エピローグデート』のこと。あの時の想い……。

 その後、僕はキミを忘れる努力をした。毎日、毎日。

 ムリに仕事に打ち込んだりして、なるべくキミのことを考えないようにしてみたりもした。そんなことできっこないのに。

 そうして、ようやく気づいたんだ。お互い嫌いになった訳じゃないんだから、無理に忘れるんじゃなくて、楽しかった想い出を心に刻んでおくべきだってことに。


 やっと心に折り合いをつけた矢先。親友から、キミが結婚を取り止めたことを聞いたよ。

 すごくビックリしたけど……正直ホッとした。

 タイムリミットが延長された気がしたんだ。

 その反面、僕の記憶が戻らない限り、一緒にはなれないとも思った。

 今度は諦めた。



 キミに1つ報告があるんだ。


 今更だけど、キミにも色々心配をかけたから、伝えておかないと。

 今朝、思い出したよ、全てを。


 高校1年生の春、初めてキミを見かけたあの日。

 僕は一目でキミの笑顔が好きになった。

 それからずっと片想いで、高校2年のあの日。

 やっとの思いでキミに告白したこと。

 花火大会、初めてのケンカ、遊園地、告白記念日……大学生の頃、社会人になってから、そしてクリスマス・イヴ……。

 あの日のこともね。


 僕の大好きなキミの笑顔も、泣き虫なキミも。

 全部思い出したよ。今更だけどね。


 あ、ごめん。これはただの報告だから、気にしないでくれ。

 やっぱ、手紙を書くのって難しいな。きっとキミはこの手紙を読んで、文章力のなさに、支離滅裂だって笑っているんだろうな。


 でも、最後まで頑張って書くよ、今の正直な気持ちを。

 だから、もう少しキミもつきあってくれよな。


 親友に、これからどうするのか聞かれたけど、先のことは全く解らない。

 キミのことも。今のキミの心も解らないしね。


 ただ僕は、今度の日曜日。そう、キミと僕との7回目の記念日に、あの海にキミとの想い出を、全て流してしまおうと思う。あの夕陽とともに水平線の彼方まで。

 あの最後のデートの時に、車で聴いたあの曲『エピローグ』のように、全てを海に流そうと思う。


 キミはどうする?

 よく考えて決めてくれ、じゃあな。



――――――* * *――――――



 次の朝。

 会社に向かう途中、手紙をポストに投函した。



お読み下さりありがとうございました。


今話より最終章『今までも、これからも。』に入りました。

次話「エピローグ」もよろしくお願いします!

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